本研究は,「誰もが,一定期間に巧緻な木材加工技能を確実に身につける」技能習得法の確立を目指して行った。そこで,熟練者の巧緻技能の感覚(視覚や力覚,触覚等)を映像や力覚デバイス等で記録し,その巧緻性を再生して学習者に提供する。そして,学習者に,あたかも自分自身が熟練の技を振るっているかのような感覚を味わわせる技能指導を開発するという研究であった。 このため,研究を次の通り分けて進めた。すなわち,①巧緻技能の解明,②通常の指導における上達過程の解明,③力覚デバイスを中心とした指導システム装置の開発,④指導システムへの巧緻技能の記憶,⑤初学者等の技能が高まったことを客観的に評価する評価法の開発に取り組んだ。 ①及び②は,加速度・各速度センサを用いて,作業動作の動きの特徴を調査した。③は,力覚デバイスを意図した通り動作(作業中の動きと力の強さを記録・再生)させるプログラム作成が中心であった。④は,熟練者の元へ赴き,熟練者に力覚デバイスやビデオ装置を取り付け,作業を行ってもらい,その動作を開発したシステムへ記憶させる作業である。⑤は,人の作業動作ではなく,その結果,木材がうまく切断できたかという切断面評価の客観的評価方法の開発である。 これらのことを実施したあと,⑥初心者に対し,力覚や視聴覚等による巧緻技能の感覚を得ながらの技能指導を行い,その指導を受けた者の技能が高まるか否かという実験を行った。対象を「のこぎり引き」とした。実験の結果,技能が高まることが確認された。このことから,われわれが開発した力覚デバイス等による指導法は,技能向上の効果があることが示唆された。
|