研究課題/領域番号 |
19H01678
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
森田 愛子 広島大学, 教育学研究科, 教授 (20403909)
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研究分担者 |
間瀬 茂夫 広島大学, 教育学研究科, 教授 (90274274)
草原 和博 広島大学, 教育学研究科, 教授 (40294269)
木下 博義 広島大学, 教育学研究科, 准教授 (20556469)
影山 和也 広島大学, 教育学研究科, 准教授 (60432283)
松宮 奈賀子 広島大学, 教育学研究科, 准教授 (70342326)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 教科書 / 眼球運動 / 視線計測 / 教師 / 学習者 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,(1) 学習者(非専門家)は,教科書をどのように見ているものなのか,(2) その見方は教師(専門家)とどこが合致し,どこが合致しないの か,(3) その見方やギャップについて,教科によってどのような特徴や共通点・相違点があるか,の3点を明らかにすることである。そのために,専門家と非専門家を対象とした実験を行い,視線計測や理解度テストを実施している。 本研究開始前に,地理の教科書刺激を用いた研究が終了しているため,その比較対象として,図表と文章のレイアウトが類似している公民の教科書刺激を用いた実験を実施した。その結果,非専門家は専門家に比べ,誘導されなければ欄外情報に注意を向けにくいことが明らかになった。この結果は,非専門家は自発的には地図に注意を向けず文章を読むという地理の研究結果と類似している。したがって,非専門家のほうが文章に注意を向けやすいという傾向は頑健であると考えられた。この結果については,2020年度に学会および論文投稿により成果発表を行う予定である。 さらに,教科書全体ではなく教科書の文章のレイアウトについても検討を行なった。この実験は,歴史に関する文章を用いて実施した。特に,箇条型レイアウトと文章型レイアウトを比較した結果,通常,情報を体制化しやすいと言われる箇条型レイアウトは,キーワードの記憶には有効であったが,歴史に関する文章の理解には,主観的にも客観的にも有利ではないことを明らかにした。むしろ,文章型レイアウトのほうが,時系列的・因果的関係を把握しやすいことがわかった。この結果については,2019年度に学会発表を行い,また,論文として投稿済みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,(1) 学習者(非専門家)は,教科書をどのように見ているものなのか,(2) その見方は教師(専門家)とどこが合致し,どこが合致しないのか,(3) その見方やギャップについて,教科によってどのような特徴や共通点・相違点があるか,の3点を明らかにすることである。 3年計画のうち1年目の2019年度の主な研究目的は,(1) 視線計測に用いる教科書の画像刺激を作成すること,(2) 新規に導入した2台の視線計測機器を本研究に合わせてセッティングし,教科書画像に対する視線計測を実施することであった。さらに補足的に,レイアウトの効果も検討した。 進捗している点として,専門性による教科書の見方の違いを,すでに実施済みの地理以外の教科について実証できたことが挙げられる。本研究の特徴は,専門性による比較,視線計測,そして教科の違いであるため,それらを全て網羅した実験を実施することができた。また,レイアウトについては,当初の研究計画にはなかった実験であったが,歴史という教科の特徴を示唆する興味深い結果が得られた。 一方,予定どおりに進行していない点として,社会科以外の教科への展開が遅れていることと,中学生のデータ収集ができていないことが挙げられる。主な原因として,視線計測機器を新たに導入した結果,仕様の違いにより,これまでの実験方法をそのまま適用できなかったことがある。
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今後の研究の推進方策 |
「進捗状況」で述べたように,1年目の2019年度には新たな知見は得られたが,社会科以外の教科への展開が遅れている。すでに理科の教科書刺激を作成しているため,2020年度の実験は理科の教科書から開始し,次に数学の教科書への展開という順序で進める。2019年度に実験実施および分析の手法は確立したため,画像刺激の作成ができれば,同一の手法で実験を実施することが可能である。 ただし,本研究の研究者の所属機関では,2020年度は新型コロナウイルス感染症により対面実験によるデータ収集を実施できない期間がある。その期間が長期にわたる場合,視線計測は実施できないため,先に画像刺激と理解度テストの精緻化を行う。
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