研究課題/領域番号 |
19H01702
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
中野 聡子 (金澤聡子) 群馬大学, 共同教育学部, 准教授 (20359665)
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研究分担者 |
原 大介 豊田工業大学, 工学部, 教授 (00329822)
仁科 陽江 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 教授 (70781251)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 日本手話習得 / 中間言語 / 再教育プログラム / 学術手話通訳 |
研究実績の概要 |
本研究では,学術手話通訳に従事する手話通訳者を対象として,比較的習得が困難とされている日本手話の言語形式・要素に絞って習得状況を把握したうえで,習得難易度の高いものに対して中間言語再構築を促す効果的かつ体系的な指導/学習プログラムを,教室環境とWBT(web-based training)環境の双方で構築することを目的としている。 2021年度は,大学生を対象として展開してきたオンライン中心の日本手話・手話通訳教育の授業の一部を公開講座としてコミュニティ通訳や学術手話通訳に従事する地域の手話通訳者に開放した。これらの受講者の学習状況に対する予備観察分析を行った結果,(1)日本手話の文法概念を有している者とそうでない者がいる,(2)CL,RS,NM等の文法概念を有していない者は,ろう講師やろう通訳モデルの手話表現を目にしても日本手話の文法への「気づき」がなく,また明示的指導を受けても変容がみられないことがわかった。 また,大学生も含めた受講者の学習状況から,文法ベースのPPP型指導は,(1)言語運用能力のうち,文法的能力はある程度身につくが,社会文化的能力,談話能力,方略的能力といった言語運用能力全般の向上が目指しにくい,(2)分析的で言語適性が高い学習者に向いているものの,そうでない学習者にとっては間違いをおかすことへの自信喪失感から学習意欲を失いやすいことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度に作成した文法ベースのオンライン日本手話・手話通訳教育の一部を学術手話通訳やコミュニティ通訳に従事している手話通訳者らに行い,日本手話の再教育における学習変容状況を把握することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究結果から,成人聴者にとって習得の難しい日本手話の要素は学習初期から継続的にみられること,そして日本手話の文法概念が身についていなければ経験を重ねても「気づき」による学びが得られにくいことが明らかになった。 そこで最終年度となる2022年度は,手話通訳経験や手話学習経験を問わず,基礎から日本手話を学ぶことが必要と考え,以下の取り組みを行う。 1)日本手話教育の授業では,PPP型指導からタスク中心教授法(task-based language teaching: TBLT)に切り替え,初めの半年間は,特定の言語形式や表現の使用を想定し,事後でそれらの指導を行うことを前提としたターゲットありのタスク,残りの半年間は言語運用力の全体的向上をねらいとしたターゲットなしのタスクを与える。 2) オンデマンド学習として,学習者1人1人が自身の日本手話習得状況における強みと弱みを把握して主体的・積極的に取り組む自己調整学習システムを構築する。 これらの指導により,学習者に生じる変化について手話表出表現の分析等を行う。
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