研究課題/領域番号 |
19H01725
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
小尻 智子 関西大学, システム理工学部, 准教授 (40362298)
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研究分担者 |
林 佑樹 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 准教授 (40633524)
瀬田 和久 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 教授 (50304051)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 観察学習 / 発見学習 / 仮説生成プロセス / 思考の外化 / 気づき |
研究実績の概要 |
本研究課題では,初等中等教育のフィールドワーク型発見学習を対象とし,学習者に観察をとおした深い試行錯誤を促すとともに,発見学習の成果を習得させたい単元の知識の理解に活用することのできる,統合的な発見学習支援環境の枠組みを明らかにする. 2019年度は,その目的を達成するための課題の一つである,「学習者自身で観察した内容から知識に関する仮説の生成を支援するための仮説生成支援システム」を,中学校の生物における動物の種類の単元を対象に開発した.本システムは,学習者の仮説生成までの思考過程を表出化させる学習インタフェースと,学習者が観察した内容から矛盾のない妥当な仮説を生成できたかを判定する仮説診断機能で構成される.このシステムを実現するために,まず動物の種類についての仮説が満たすべき性質を明らかにしたうえで,観察から仮説を導出するためのプロセスを定義した.そのうえで,定義したプロセスに沿って容易に思考を表出化できる学習インタフェースのデザインを考案した.次に,観察と生成した仮説との矛盾を定義するとともに,矛盾であることを診断した場合には,その旨を通知する機能を学習インタフェース上の機能として実装した.システムはWebシステムとして実現しており,ブラウザがあればどこでも利用できるようになっている. 構築したシステムを用いて,実験を行った.大学生にシステムを用いてもらった結果,開発した学習インタフェースに沿って思考を外化することで仮説を生成できることが明らかになった.またシステムが観察と矛盾している仮説を正しく診断できることが明らかになった.一方,中学生にシステムを使ってもらった実験では,定義した学習プロセス自体にとまどいはみられたものの,システムを利用して仮説を生成するという一連の活動を楽しいと感じてくれた学習者が多く,学校での利用することに抵抗は見られなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は研究目的であった「学習者自身で観察した内容から知識に関する仮説の生成を支援するための仮説生成支援システム」を開発した.また,観察増幅プラットフォームについても,議論は進んでいる.したがって,研究自体は予定どおり進展している.
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今後の研究の推進方策 |
現時点では研究は予定どおり進捗している.2020年度には,システムの診断した矛盾をもとに,学習者に自身の仮説の妥当性に関する気づきを与えるメッセージを出す手法を仮説生成支援機能の一部として開発する.また,観察増幅プラットフォームとして,多様な観察を支援する枠組みを提案する.同じ問題に対して異なる仮説を生成している学習者がいる場合,学習者とは異なる観察をしている可能性が高いため,観察増幅プラットフォームでは,他者の観察を疑似体験できるための仕組みを明らかにする.最後に,上記課題と並行して,単元の教材構造と学習者の生成した仮説の関係を整理するための観察仮説データベースを設計する予定である. 研究は予定どおりであるが,コロナウィルス蔓延の事態を受けて,当初成果発表を予定していた学会が中止やオンラインのみの開催になるなどしており,当初期待していたような十分な意見をもらえない可能性がある.したがって,成果発表のスケジュールについては,今後当初の予定を変更する可能性がある.
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