研究課題/領域番号 |
19H01728
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研究機関 | 木更津工業高等専門学校 |
研究代表者 |
大枝 真一 木更津工業高等専門学校, 情報工学科, 准教授 (80390417)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 教育データマイニング / 潜在スキル構造 / プログラミング教育 / 学習中のログデータ / Skill Modeling / Student Modeling / Q-matrix / 学習効果の可視化 |
研究実績の概要 |
近年,実用的なITS(Intelligent Tutoring System)や,LMS(Learning Management System)が普及し,実際の教育現場でe-Learningシステムが活用されている.ITSやLMSによって,学生の試験結果や学習過程のログデータを保存することが容易になった.EDM(Educational Data Mining)では,これらの膨大な教育関連のデータから,いかにして意味のある情報を抜き出すかが研究の焦点となっており,ビッグデータ研究の発展に伴って近年急速に注目されている. 特に,本研究では,調査対象をプログラミング教育とし,ITS,LMSサーバに蓄積された膨大な試験結果と学習過程のログデータおよびソースコードから,時間変化するスキルの形成過程を可視化し,潜在的スキルダイナミクスを同定することを目的としている. 当該年度では,初等プログラミングの授業で取得されたログデータとソースコードを解析し,授業に追従できていない学生の抽出を行う手法を提案した.一般的には,学生のスキル状態を把握するためには,試験を用いるが,教員と学生の双方にとって負担が大きい上,把握までに時間的な遅延が起こる.そこで,我々の提案する授業中のログデータとソースコードから自動的にドロップアウトしそうな学生を特定する手法により,早期に補講等の対処が可能となった. また,学習者のモデル化である学生モデリング(Student Modeling)で一般的に用いられるKnowledge Tracingの拡張を行った.我々の提案手法では,Convex Factorization Machinesを適用することで凸最適化が可能となり,高速化と推定精度の向上が可能となった.本提案手法を応用することにより,学習者のスキル状態の推定や解答結果の予測が可能となることが期待される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
授業中のログデータおよび提出されるソースコードの自動取得システムを開発した.これにより,研究に必要なプログラミング授業中の学生のUNIXコマンド履歴などの振る舞いや,コンパイル時のソースコードなどの多種多様なログデータを取得できるようになった. 取得したログデータ・ソースコードの解析を行った.これまでの我々の研究成果として,コマンドログやキーログのみを用いてプログラマーのスキル評価を行った実験では,修飾キー(Esc, Control, altキー)の打鍵数と成績との間に正の相関が見られたものの,それ以上の知見は得られなかった.そこで,学生の成果物である課題に対するソースコードを決定木およびランダムフォレストによって解析を行う手法を提案した.これにより学生の評定に影響する隠れた要因の可視化を行った. また,EDMの目標の一つである学習者のモデル化の拡張を行った.学習者のモデル化とは,過去の解答結果から学習者のスキル状態を推定し,その推定結果から未解答の設問に対して正答するか誤答するか予測をするものである.これにより,学習者に対して適切な設問を出題できるようになる.学習者モデルには一般的にKnowledge Tracingと呼ばれる手法が用いられる.これは内部では隠れマルコフモデルを用いている.我々は,隠れマルコフモデルの代わりにFactorization Machinesを用いる手法を提案していた.該当年度では,これを凸最適化したConvex Factorization Machinesに拡張することで高速化と推定精度の向上が可能となった. これらの研究成果により,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は新型コロナウイルスの感染予防対策のため,遠隔授業となった.そのため,これまでに構築したコンピュータ室での自動ログ取得システムを使用することができず,遠隔授業中の学生の振る舞いのデータは取得できない.今後,遠隔授業から通常の対面授業に,いつ復帰するのか全く不透明な状況である.データの採取ができないと研究の遂行が難しい部分がある. 一方,教育ビジネスで大きな成長を遂げているものの多くはe-Learningである.また,今後,なんらかの事情(震災や他の疫病)で再度遠隔授業になる可能性もある.そこで,遠隔授業でも学生の振る舞いを取得し,学習効果やスキル修得過程などの可視化を行う研究は非常に重要となるであろう.また,現在多くの学校で遠隔授業を行っているが,その教育効果について工学的な手法による解析は不可欠である. 本研究の目的である時間変化するスキルの形成過程を可視化し,潜在的スキルダイナミクスを同定する手法を対面授業のみならず,遠隔授業にも適用することで,本研究のさらなる深化を図りたいと考えている.
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