研究課題/領域番号 |
19H01739
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
間野 一則 芝浦工業大学, システム理工学部, 教授 (80173938)
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研究分担者 |
山崎 敦子 (慶祐敦子) 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (10337678)
長谷川 浩志 芝浦工業大学, システム理工学部, 教授 (40384028)
井上 雅裕 芝浦工業大学, システム理工学部, 教授 (50407227)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | システム工学 / 工学教育 / グローバルコンピテンシー / PBL / サイバーフィジカルシステム / ダイアライゼーション / アセスメント / ライフライン分析 |
研究実績の概要 |
システム思考に基づく工学教育のグローバル展開において,価値観,科学技術に対する知識や認識の違い,現地化を包含した包摂的問題解決力,すなわち「技術以外の外生的な要素を取り込んだ問題解決力」が必須であり,多国籍・多分野型PBL(Project-Based Learning)教育が多く試行されている.このようなPBL教育での質保証と履修者の適切な評価が不可欠である.本研究では,以下の3点に注目し研究を行っている. (1)サイバーフィジカルシステムを用いたPBLコミュニケーションシステムの開発:プロジェクトチームにおけるコミュニケーションのICTを用いたPBLダイアライゼーション(行動・対話記録)とそのフィードバックによる円滑なコミュニケーション手法の確立を目指している.これまで実際の実施国際PBLにおける音声を中心とした行動ログのデータベース化を行い,得られた特徴とPBL参加者のコンピテンシーとの関連付けを探った. (2)感性価値に着目した感動把握手法の導入とぎょえー体験による変化対応力の開発:ぎょえー体験によりチームワークと帰属意識の向上,急な変化に対するポジティブ思考修得の心理行動モデルに基づく教授学習法の確立のため,PBL参加者のライライン分析を中心としたチームワークに対する個人能力との関係を分析した. (3)イノベーション創出×異分野・異文化のためのアセスメントシステムの構築:多国籍でのPBL参加者のアセスメントとして,事前・事後評価の他,日本語及び英語・タイ語によるPROGテストによるPBLの能力育成の確認,海外進出企業に求められるコンピテンシーについて調査した.さらに,これまで提案したCEFR準拠の工学系グローバル・コミュニケーションCan-doリストに基づく日本人・外国人のグローバル・コミュニケーション能力到達度とPBLアウトカムの関連を調査した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サイバーフィジカルPBLシステムの開発において,2019年度は,PBL活動の実データを収集し,メンバーの発言に対する,メンバー属性,時間属性,発信-受信属性,音声(一部映像)データ属性等を考慮したPBLダイアライゼーションデータベース(DB)を設計した.PBLでの音声の収集では,話者の移動,周辺雑音,未知話者の割り込みも多いため,各人によるボイスレコーダ装着でのデータ収集を行い,音声ログとし,それにタグを付与した.課題としては,100%の話者分離は困難であるが,タグの確率的な信頼度導入による求める行動特性についても確率的な取り扱いによる有効性が期待できる. 感性価値に着目した感動把握手法の導入とぎょえー体験による変化対応力の開発においては,ぎょえー体験による感動把握手法を伴った多国籍・多分野型PBLの実施により取得したチームメンバーの個々の行動分析結果を得た.この成果を国際会議INTED2020においてPBLにおける不測事態におけるチーム内の各メンバーのコンピテンシーの有効性として発表した. イノベーション創出×異分野・異文化のためのアセスメントシステムの構築においては,継続して,研究協力者のキングモンクット工科大学トンブリ校とのグローバルPBLの繰り返し実施により,アセスメント手法の検証・改善を図った.同時にグローバルなコンピテンシーについてのアセスメントのために,海外企業の調査を実施した.これらをまとめて,グローバルエンジニア教育開発のためのグローバルコンピテンシーアセスメントについて国際会議で発表した.また,多言語対応のグローバル・コミュニケーション力測定の新指標として提案したCEFR準拠の工学系コンテクストでの英語コミュニケーション力評価指標について実際のPBL評価を示した論文について,日本工学教育協会より工学教育賞(論文・論説部門)を受賞した.
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今後の研究の推進方策 |
サイバーフィジカルシステムを用いたPBLコミュニケーションシステムの開発においては,(1)サイバー情報のPBLダイアライゼーションDB設計・検索手法向上として,付与するラベル,アノーテーションの詳細化・自動化とPBLアクティビティ検索技術を提案し,サイバー情報からフィジカル空間へのフィードバックによるPBL活動可視化・効率化ツール,遠隔情報共有技術を設計する.(2) また,サイバー情報であるPBLダイアライゼーションDBからPBLメンバーの活動貢献度予測法,PBL活動状態の推定法について検討する. 感性価値に着目した感動把握手法の導入とぎょえー体験による変化対応力の開発においては,以下の検証を行う.(1)変化対応力の学修に対する学修評価シートの試作:メンバーの技能や知識の情報共有(認知,体験,共有),メンバーの行動予測(行動や思考から必要な行動の予測),暗黙の協調(備わるまでの時間経過やタイミング)について検証する.仮定したチーム内心理行動モデルの妥当性を確認,試作する.(2)感動把握手法の導入の効果検証:システムズエンジニアリングのV&V(Verification & Validation)の手法にもとづき検証する. イノベーション創出×異分野・異文化のためのアセスメントシステムの構築においては,継続して,研究協力者のキングモンクット工科大学トンブリ校とのグローバルPBLの繰り返し実施により,アセスメント手法の検証・改善を図る.また,コミュニケーション能力レベルの規格CEFRに準拠した多言語対応のグローバル・コミュニケーション力測定の新指標として提案したCEFR準拠の工学系コンテクストでの英語コミュニケーション力評価指標に基づくアセスメント評価とジェネリックスキルテストPROGの結果を相関分析し,提案手法の妥当性を確認する.
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