新型コロナウイルス禍が未だ収束しない中で、予定された研究を全て実施することは叶わなかった。その一方で、研究課題に沿うトピックをできる限り柔軟に方策を尽くして検討した結果、非常に有意義な知見が得られた。 <研究1>関係流動性が、自己への妨害者に対する人々の対応に差をもたらすとの仮説を検証するため、日米国際比較調査を行った。その結果、反撃の行動意図と反撃に対する他者からの評価期待に文化差が得られるとともに、それらの変数が関係流動性知覚と関連していた。 <研究2>関係流動性の高さが見知らぬ人への接近をもたらす心理過程を検証した。その結果、「見知らぬ人への接近」と一括りにされがちな行動の中に、いくつかの異なるサブタイプが存在することが示唆された。 <研究3>関係流動性と誇示的消費行動を取り結ぶ心理的媒介過程を検討した。しかし結果は一貫性が低く、解釈が困難なものであった。 <研究4>中高生の部活動における内的動機付けを高める要因を、指導者と部員の関係、および部員同士の関係における称賛・批判行動に着目して検討した。その結果、部員同士の関係性が果たす役割の大きさが示唆された。 <研究5>付加的な検討課題として、関係流動性によって促進されることが想定される社会的地位欲求と、環境保護志向的消費行動との関連を検討した。実験室実験の結果、予測通りの効果は見られなかった。その原因として、実験操作の弱さ、従属変数の測定法の問題、などが考察された。
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