研究課題/領域番号 |
19H01749
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山口 裕幸 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (50243449)
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研究分担者 |
縄田 健悟 福岡大学, 人文学部, 講師 (30631361)
池田 浩 九州大学, 人間環境学研究院, 准教授 (80454700)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | チームプロセス / プロアクティビティ / チーム力開発 / チームマネジメント |
研究実績の概要 |
3年計画の1年目となる2019年度は、曖昧さの残るプロアクティビティの概念を明確にして、その測定と可視化方略を開発する理論的取り組みと、チームで職務に取り組む企業組織の現場をフィールドに、チーム活動を6ヶ月にわたって追跡し行動観察、インタビュー、質問紙調査を実施した実証研究活動とを両輪に進めた。 まず、理論的な取り組みとして、抽象度の高いプロアクティビティの概念を心理学的視点から整理して明確に定義することに取り組んだ。そして、その定義に基づいて測定尺度を開発し、各種の組織現場においてチームで職務遂行にあたっている成員を対象に質問紙調査を実施してデータを解析し、チームメンバーに備わっているプロアクティビティを可視化することに取り組んだ。 また、実証科学的活動として、企業の製品・技術開発に取り組むチームを研究対象として、6月時点で、チームワーク、成員間コミュニケーション、管理者のリーダーシップ行動等の変数を測定して、ベースラインとなる現状を確認した。7月から12月までの6ヶ月間、チーム・ダイアローグ活動、管理者とのワン・オン・ワン・ミーティング、メンタルモデル共有活動、感謝ミーティング、他組織との交流等のチーム・イベントの施策を実施していき、それによって、成員個々のプロアクティビティと成員間の対人関係や管理者との関係等にどのような変化が生じてくるのか、行動観察やインタビューを行い、これらの取り組み終了直後の1月時点で実施した質問紙調査で得られたデータを、6月時点と比較して解析する時系列的分析を行って、変化の様相を明らかにした。 上記の研究活動によって得られた研究成果は、その都度、国内および海外の学会大会や研究集会において発表したりワークショップを開催したりして、知見を社会的に広げることに取り組んだ。また、論文にまとめて各種学術誌に投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の第1の目的として、抽象度が高いがゆえに曖昧さの残るプロアクティビティの概念を心理学的視点から整理して明確に定義する取り組みは、文献レビューと研究交流活動によって順調に進み、明確にした概念を測定する妥当性・信頼性の高い尺度の開発まで到達している。 それを踏まえて、第2の目的である、チームのメンバーがプロアクティビティを獲得することを促進し、さらに育成・強化する影響をもたらす組織変数を同定し、その関係性を実証的に検討する取り組みは、チーム活動を行う組織現場をフィールドとする行動観察とインタビュー、質問紙調査を実施して、着実に進んでいる。この実証的活動は、長期にわたってチームメンバーの行動や認知の変化、チームレベルの心理学的特性の変化を追跡する取り組みであり、さらに継続することを計画している。これによって、チームメンバーのプロアクティビティの獲得と育成・強化に密接に関連する組織変数を同定するとともに、それらの相互作用関係を分析することが可能になり、計画で期待していた結果以上の成果に結びつく可能性が膨らんでいる。第2の目的達成に向けた進捗は順調であるといえる。 本研究の第3の目的は、実証研究で得られる学術的知見を、組織現場の重要課題を解決するマネジメント方略の開発に生かすプリスクリプティブな取り組みに挑戦することにある。チームの育成・開発に取り組む組織現場の実務家との意見交換を通して、いかなる取り組みがメンバーのプロアクティビティの促進や職場の心理的安全性の確保、さらには管理者のセキュアベース・リーダーシップの実践に効果的に働くのか、基盤となる検討を進めることができた。この第3の目的を達成することについても、着実に歩を進めており、3年計画の終了時点で有益な研究成果の獲得に向けて順調な進捗状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
チームで職務遂行している組織をフィールドとする質問紙調査、行動観察、インタビューによる実証研究は、本研究の中核であり、1年目の取り組みを通して構築したパラダイムをベースに着々と研究を進める計画である。 さらに、これまでチームを対象に実施してきた質問紙調査の研究結果をデータベース化して、チーム・パフォーマンスと密接に結びつく関係にある変数を同定し、プロアクティビティやチーム・コミュニケーション、対人関係、組織革新指向性、心理的安全性等の側面から、チーム力の高さを測定し、診断するシステムの開発に取り組む。スマートフォンやタブレット型PCの普及で、紙に鉛筆で回答してもらって結果を集計するスタイルから、デバイスに回答してもらって、即座に集計し、チーム状況を可視化してフィードバックすることが可能になっている。本研究は、研究結果を実際の組織におけるチームマネジメントの有効性向上に生かせるようにプリスクリプティブなアプローチで研究を推進する。 また、研究成果の公表活動にも力を入れていく。1年目の実証研究の成果発表も行った他が、実際のところ、途中経過の発表にとどまる内容のものが多かった。まとまりのある成果として論文にまとめ、国際ジャーナル・国内学会誌に投稿する。また、理論的検討の成果についても、専門書の執筆、各種学術ジャーナルの執筆を行って、広く社会にフィードバックしていく。
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