研究課題/領域番号 |
19H01751
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研究機関 | 科学警察研究所 |
研究代表者 |
島田 貴仁 科学警察研究所, 犯罪行動科学部, 室長 (20356215)
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研究分担者 |
樋口 匡貴 上智大学, 総合人間科学部, 教授 (60352093)
荒井 崇史 東北大学, 文学研究科, 准教授 (50626885)
高木 大資 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 講師 (10724726)
石盛 真徳 追手門学院大学, 経営学部, 教授 (70340453)
木村 敦 日本大学, 危機管理学部, 准教授 (90462530)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 犯罪予防 / 介入 / 縦断分析 / 集団 / マルチレベル / フィールド実験 / ナッジ / 高齢者 |
研究実績の概要 |
研究初年度である本年度は,地域での犯罪予防に即した介入デザインの策定,高齢者に対する社会調査,公的機関が犯罪被害予防のために実施したメディアキャンペーンの効果測定を行った。 地域での犯罪予防に即した介入デザインの策定では,研究代表者および研究分担者4名が,全国各地で防犯対策を担当する警察官約30名を対象としたワークショップに参加し,各地の取り組み報告から介入対象,介入方法,対象者を整理した。第二に,研究代表者および研究分担者2名が,警察官が町内会・自治体,高齢者施設で実施した特殊詐欺被害防止のための教育介入に参加し,介入効果の測定方法を検討した。第三に,日本心理学会大会(2019年9月)および地方(2020年2月)で,研究者と実務家との交流会を開催し,本研究の代表者・分担者にとどまらない研究者と実務家との間で,犯罪類型ごとに介入および効果測定のあり方を共考した。 高齢者に対する社会調査では,首都圏の1市の65-84歳の高齢者2800名に対して,特殊詐欺対策を念頭に郵送調査を実施した。設問項目は,防犯情報・防犯教育への接触,防犯に関する他者との相互作用,固定電話の使用状況,迷惑電話機器の設置や在宅時の留守番電話機能といった犯罪予防行動に対する態度と行動意図,地域での社会参加,デモグラフィック項目とした。 メディアキャンペーンの効果測定では,公的機関が実施した特殊詐欺被害防止のための3つの介入(防犯イベント,ソーシャルメディアを用いた情報発信,動画)の介入効果を,研究分担者1名と研究代表者が,複数時点の調査を実施して測定した。防犯イベントは申し込み時・参加時・参加後,ソーシャルメディアを用いた情報発信では情報内容を変えながら複数時点,動画に関しては視聴前,視聴直後,約2週間後の3時点測定した。測度は特殊詐欺に対する態度,犯罪予防行動意図,犯罪予防行動とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定では,研究初年度の実施事項は介入計画の策定と予備調査にとどまっていたところ,現場のニーズと研究者のシーズとをマッチングさせることによって,より現実に近い複数場面での社会調査およびフィールド実験を実現できた。研究代表者および研究分担者の全員が,研究初年度から,地域で実際に行われている犯罪予防のための介入に関与し,介入で起きている心理メカニズムを考察できたことは当初の計画以上の進展であった。
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今後の研究の推進方策 |
高齢者調査に関しては,防犯情報・防犯教育への接触,防犯に関する他者との相互作用が犯罪予防行動に対する態度・行動意図に対する影響を分析する。また,個人の犯罪予防行動を阻害する要因として現状維持バイアスや楽観バイアスに注目した分析を行う。公的機関が実施したメディアキャンペーンの効果測定では,介入内容を独立変数に,特殊詐欺に対する態度,犯罪予防行動意図,犯罪予防行動を従属変数にした分析を行う。初年度は特殊詐欺に特化した研究を実施したが,2年目以降も研究者と実務家との協働を引き続き進め,幅広い犯罪類型における犯罪予防の介入および効果検証の蓄積を図る。
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