研究課題/領域番号 |
19H01754
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
渡部 雅之 滋賀大学, 教育学部, 教授 (40201230)
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研究分担者 |
小沢 日美子 同朋大学, 社会福祉学部, 教授(移行) (10532038)
松田 繁樹 滋賀大学, 教育学部, 教授 (60405058)
遠藤 美行 京都西山短期大学, その他部局等, 准教授(移行) (60835502)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 空間的視点取得 / 実行機能 / 眼球運動 / 重心動揺 / 加齢 |
研究実績の概要 |
眼球運動を指標とする空間的視点取得能力の測定課題を開発し、これを用いて身体機能と実行機能の複合的関与による生涯発達過程を解明することが本研究の目的である。特に2019年度は、眼球運動反応を利用した新たな空間的視点取得課題を開発することと、身体機能と実行機能の測定課題を準備することが目的であった。 そのために、眼球運動反応測定装置(竹井機器「トークアイライト」)を購入し、空間的視点取得課題を思考中の注視点の移動軌跡を計測した。大学生11名と高齢者28名が実験に参加した。ディスプレイへの刺激提示直後から注視点が移動を開始するまでの潜時を計算し、これを身体から視点を切り離すために要した時間(視点切り離し時間)と見なした。大学生の視点切り離し時間は、高齢者よりも有意に短かった。さらに、実行機能の一種である記憶容量と注意の切り替え機能を、それぞれの代表的課題を用いて測定した。大学生では視点切り離し時間と注意の切り替え機能との間に有意な相関が見られた。眼球運動反応を利用することで、空間的視点取得における視点切り離し時間を捉えることができたと結論づけた。 さらに、2020年度の研究費の一部を前倒し使用し、重心動揺計(竹井機器「グラビコーダGW-7})を購入し、15秒間の片足開眼立位時の重心動揺を測定して、空間的視点取得能力との関連を見た。空間的視点取得課題における反応時間の一部との関連は示されたが、視点切り離し時間とは相関しなかった。 以上の結果を踏まえて、これらの諸課題を幼児に課す際の留意点を研究分担者と洗い出すとともに、研究成果の一部を国際学会にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験参加者が少な目であったこと(特に大学生)と幼児・児童への試行ができなかったことは、当初計画に対する未達成部分であるが、年度の目標は得られた成果からほぼ達成することができた。一方、研究分担者他よりなる学際的な「空間認知研究会」を開催し、当該研究テーマに関する国際的動向の紹介と分析を行って、計画を上回る成果を得た。 以上より、本研究課題はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、研究分担者が中心となって、昨年度の研究で準備した空間的視点取得課題、重心動揺課題、空間スパン課題、選択的注意課題、帰納的推論課題を5~6歳児に課し、課題間の関連、特に空間的視点取得課題と他の4課題との関連について分析する。さらに、2022年度前半までには、幼児から高齢者までを対象とする十分な数(400程度)のデータを収集する予定である。同時に別の研究分担者は、幼児の身体機能の詳細についての実験的知見を収集し、2022年度以降に予定する幼児教育と高齢者リハビリテーションの改善研究に備える。 ただし、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、幼児を対象とした研究の年度内実施が困難になることも予想される。その場合は、比較的感染防止策を講じやすい成人を先に対象とする変更を行い、幼児のデータは2021年度に収集することとする。 なお、得られた成果は随時学会等で公表し、 研究の方向性を確認する。
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