研究課題/領域番号 |
19H01758
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研究機関 | 大妻女子大学 |
研究代表者 |
柴山 真琴 大妻女子大学, 家政学部, 教授 (40350566)
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研究分担者 |
高橋 登 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (00188038)
ビアルケ 千咲 大妻女子大学, 人間生活文化研究所, 研究員 (70407188)
池上 摩希子 早稲田大学, 国際学術院(日本語教育研究科), 教授 (80409721)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 日系国際児 / 日本語作文力 / 継承語としての日本語 / 二言語同時習得 / バイリテラシー |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、現地語(優勢言語)が異なる国際結婚家族の子どもを対象に、3時点(小2→小4→小6)での縦断的作文調査を行うことにより、継承語(日本語)作文力の発達過程の特徴-「二言語の同時習得が日本語作文力の形成に及ぼす一般的な影響」と「優勢言語や現地校の作文教育による固有の影響」-を解明することである。具体的な課題は、以下の通り。【課題1】ドイツ語を優勢言語とする独日国際児の日本語作文力の発達過程を解明すること。【課題2】中国語(繁体字)を優勢言語とする台日国際児の日本語作文力の発達過程を解明すること。【課題3】台日国際児の日本語作文力の発達過程の特徴と家庭での支援過程との関連を把握するために、台日国際家族における支援過程を具体的に明らかにすること。 上記課題を明らかにするために、3年目である2021年度は、以下の3つの調査・研究を行った。 (1)【調査1】(第2回調査):在ドイツ日本語補習授業校(A校)に通う独日国際児(小学部4年生)を対象に、2種類の作文課題(「物語文課題」と「説明文課題」)を実施した。【調査1】で得られた作文データについては、年度末までに大方のデータ整理を行った。 (2)【調査2】(第2回調査):在台湾日本語補習授業校(TE校・TH校)に通う台日国際児(小学部4年生と6年生)を対象に、2種類の作文課題(「物語文課題」と「説明文課題」)を実施した。【調査2】で得られた作文データについては、年度末までに大方のデータ整理を行った。 (3)【調査3】(3年次調査):台日国際家族(2家族:「幼稚園児から小学校中学年に進級する子どもがいる家族」と「小学校中学年から高学年に進級する子どもがいる家族」)を対象に行動観察調査を実施した。年度末までに、各家族において収集された観察記録全体の整理を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」に記した3つの調査・研究と対応させると以下の通りである。 〇【課題1】と【課題2】に関わる調査・研究:当初の計画通り、独日国際児と台日国際児(いずれも日本語補習授業校小学部4年生を対象/台日児のみ小学部6年生も対象)に、3年次調査を行うことができた。また、2019年度に実施した作文調査の分析結果を独日国際児と台日国際児の比較分析という観点から分析し直して、調査報告としてまとめた(『人間生活文化研究』に投稿し掲載された)。さらに【課題1】の関連調査として、独日国際児を対象に2020年度までに実施した縦断的作文調査の分析結果を「2021年度ドイツ地区日本語補習授業校現地採用講師研修会」で講演し、ドイツ各地の日本語補習授業校で継承日本語教育に携わっている実践者に還元することができた。 〇【課題3】に関わる調査・研究:台日国際児の行動観察記録を系統的・継続的に収集することができ、3年次調査を行うことができた。 他方で、コロナ禍の影響が長引き、ドイツおよび台湾でのフィールド調査を実施することができなかった。 以上の理由から、「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
4年目である次年度は、以下の3点を中心に進めていく予定である。 (1)【課題1】と【課題2】に関わる調査・研究:1)独日国際児と台日国際児(いずれも日本語補習授業校小学部4年生)の日本語作文のデータ分析。2)独日国際児と台日国際児の日本語作文の小2から小4にかけての変化過程の分析。いずれもこれまでに独自に開発した「作文評価法」(①文字・表記・単語レベル、②構文レベル、③談話レベル、の3次元から構成)を使って系統的なデータ分析を行う。3)以上の2つの分析を通して、小学部4年生段階における「二言語の同時習得が国際児の日本語作文力の形成に及ぼす一般的な影響」と「優勢言語や現地校の作文教育による固有の影響」を具体的に把握することを目指す。 (2)【課題3】に関わる調査・研究:次年度は、以下の2点を中心に進めていく予定である。1)台日国際家族における国際児の行動観察調査。2)対象家族のうち「小学校中学年から高学年に進級する子どもがいる家族」の母親・父親・対象児へのインタビュー調査(2022年度に当該家族の対象児が日本語補習授業校を卒業するため)。 (3)併せて、2021年度に実施できなかったドイツと台湾でのフィールド調査も実施する。作文データの分析に必要な研究資料を得るために、授業場面で発揮される児童の日本語力(口頭発表力、読み書き力)、授業外の場面(休み時間など)での児童の日本語使用状況や学校外での日本語経験(日本語の流通度や使用機会、日本語資源の入手状況など)を把握することが欠かせないからである。海外渡航が困難な場合には、海外渡航が可能になった時点でデータの追加収集ができるよう調整する。
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