研究課題/領域番号 |
19H01767
|
研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
堀越 勝 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 認知行動療法センター, センター長 (60344850)
|
研究分担者 |
森田 展彰 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (10251068)
伊藤 正哉 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 認知行動療法センター, 室長 (20510382)
小西 聖子 武蔵野大学, 人間科学部, 教授 (30251557)
大江 美佐里 久留米大学, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (40373138)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 心的外傷後ストレス障害 / PTSD / 認知処理療法 / CPT / 感情調整 / トラウマ / ストレス / 認知行動療法 |
研究実績の概要 |
本研究では、心的外傷後ストレス障害(PTSD)に対する治療とケアの向上を目的として、認知処理療法(Cognitive Processing Therapy; CPT)について3つの研究 (個人版CPTのランダム化比較試験、集団版CPTの前後比較臨床試験、CPT心理教育マテリアルの開発)を実施してきた。加えて、我が国におけるPTSD関連疾患の病態理解のための大規模なインターネット調査の論文化を進めてきた。臨床試験については、新型コロナウイルス感染症の感染拡大や緊急事態宣言に対応するために一時的に停止した。そのため、オンラインでの実施に関しての倫理事項を入念に精査し、倫理委員会の承認の上で、オンラインでのセッション実施も可能な形に研究計画を変更した。本年度は、個人版CPTの臨床試験は43例の登録まで達成し、脳画像の撮像を継続した (計20件の撮像)。集団版CPTは前々年度に目標21例まで達成し、本年度も引き続き論文化を進めてきた。さらに、CPTへと導入するための感情の心理教育プログラムのコンテンツ開発を進めた。心理教育マテリアル開発については、前年度に作成したCPTをわかりやすく紹介する漫画をウェブ上で公開するとともに、研究チーム内でも臨床試験において活用した。大規模調査のデータについては、英語論文としてチーム内で執筆を進めた。DSM-5とICD-11の診断基準の有病割合を比較す論文、自殺念慮とPTSD症状との関連を検討した論文、感情調整スキルとPTSD症状の関連を検討した論文がそれぞれ国際誌にて採択され、公表された。さらに、CPTの研修効果を検討するための評価尺度の選定や翻訳を進め、次年度以降のCPTの研修の効果が検討できるよう、研究デザインを進め、倫理委員会の承認を得た。日本トラウマティック・ ストレス学会では、上記の様々な成果を報告をした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症の感染拡大の状況において医療機関における臨床研究が滞る中で、当研究チームはいち早くオンラインでの認知行動療法実施の倫理事項や手続きに関して調べ、運用案を策定し、研究計画の変更について倫理委員会の承認を得て、臨床試験を継続させてきた。そのため、例年に劣らぬリクルートペースを実現することができた。さらに、これまでの研究の成果が徐々に身を結び、国際学術誌での論文も複数公表することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度に得たオンラインでの実施のノウハウを活用して、来年度以降も新型コロナウイルス感染症への対策を十分に取りながら臨床研究を進めていく。大規模調査研究に関しては、自殺念慮とPTSDとの縦断的な関係性や、複雑性悲嘆の診断基準の比較、物質使用とPTSDとの関連などに関して論文化を進めており、国際学術誌への公表を目指す。さらに、日本トラウマティック・ストレス学会においては、認知処理療法と他の心理療法(持続エクスポージャー療法、EMDRなど)との比較から治療機序を考察するシンポジウムを企画している他に、PTSDの患者に対して心理療法を導入する際の留意点や、大規模コホート調査を実施するためのノウハウなど、これまでの研究で得た知見について公表する予定である。
|