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2019 年度 実績報告書

柔軟な行動の予測と制御 -行動神経科学によるアプローチ-

研究課題

研究課題/領域番号 19H01769
研究機関大阪大学

研究代表者

小澤 貴明  大阪大学, 蛋白質研究所, 助教 (90625352)

研究分担者 兎田 幸司  慶應義塾大学, 文学部(三田), 助教 (60794948)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード予測 / 報酬 / 嫌悪 / 時間
研究実績の概要

本研究の目的は,様々な予測に基づいた行動と,その柔軟な選択を制御する心理学的・神経科学的メカニズムを明らかにすることである。頭部固定下の動物においてスクロース水溶液を用いた報酬性の条件づけ課題について検討を行ったところ,条件づけ手続きを繰り返すことにより,動物が異なる聴覚刺激を弁別し,予測に基づいた適切な行動反応を示すようになることが確認された。また,嫌悪刺激を用いた恐怖条件づけ課題についても検討したところ,動物は嫌悪事象の予測に従って強い恐怖反応を示すようになることが観察された。報酬性・嫌悪性どちらの条件づけにおいても期待された刺激(報酬あるいは嫌悪刺激)を呈示しない消去手続きを行った際には,予測に基づいた反応が低下した。このことから,快・不快を伴う条件づけ場面において動物は柔軟に行動を変化させることが可能であることが明らかになった。次に,頭部固定下の動物において,一定の時間間隔ごとに報酬が与えられる条件づけ課題の訓練を行ったところ,報酬が与えられるタイミングに近づくに伴って動物の報酬希求反応が増加した。その後,エサ報酬を与えないで反応頻度のピークを検討する「ピーク法」を用いて解析を行ったところ,本来報酬が与えられるタイミング付近で反応のピークが観察された。この実験系を発展させ,左右どちらかの吸い口から報酬が与えられ,セッション中に報酬が呈示される吸い口が変更される逆転学習課題を考案し,動物に柔軟な行動の変更が可能であることを示した。これらの結果は内的な時間知覚を手がかりにした場面においても,動物は柔軟に行動を切り替えることが可能であることを示している。さらに,行動中の動物における神経活動を観察するための,蛍光センサーを用いたリアルタイムイメージング技術について予備的な検討を行い,脳内の標的領域において行動と関連した神経活動が観察可能であることを確認した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の達成に必要な行動課題について,代表者と分担者の共同研究を通して多くの有益なデータを収集することができた。また,神経活動観察のためのイメージング技術についても,セットアップおよび基礎データの収集が順調に進んでいる。これらの理由から,おおむね順調に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

「情動に関連する予測」および「空間や時間を使った予測」に基づいた行動課題において,各刺激パラメータの変更が行動に及ぼす影響についてより詳細に解析を行うことにより,予測に基づいた行動とその柔軟な制御に関与する心理学的なプロセスについて明らかにする。また,光遺伝学を利用した神経操作技術,および新たに立ち上げた神経活動イメージング技術を適用することで課題中の神経活動とその機能的役割についても検討する。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] d-Cycloserine reverses scopolamine-induced object and place memory deficits in a spontaneous recognition paradigm in rats.2019

    • 著者名/発表者名
      Ozawa T, Yamada K, Ichitani Y.
    • 雑誌名

      Pharmacology Biochemistry and Behavior

      巻: 87 ページ: 172798-1727805

    • DOI

      10.1016/j.pbb.2019.172798.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Neural circuits in goal-directed and habitual behavior: Implications for circuit dysfunction in obsessive-compulsive disorder.2019

    • 著者名/発表者名
      Simmler LD, Ozawa T.
    • 雑誌名

      Neurochemistry International

      巻: 129 ページ: 104464-104452

    • DOI

      10.1016/j.neuint.2019.104464.

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] Neural mechanism of time perception.2020

    • 著者名/発表者名
      Toda, K., Yatagai, S., Yamada, K., Yamamoto, K., Sakurai, K., Meck, WH. & Yin, HH.
    • 学会等名
      日本生理学会第97回大会
  • [学会発表] 恐怖学習を制御するネガティブフィードバック神経回路2019

    • 著者名/発表者名
      小澤貴明
    • 学会等名
      蛋白研セミナー「精神疾患の分子・回路病態研究の最前線」
    • 招待講演
  • [学会発表] 学習の速さと記憶促進薬の効果には個体差がある ―空間記憶の記銘におけるラットの個体差とD-Cycloserineの効果―2019

    • 著者名/発表者名
      下田 翔太,五十嵐 優香,小澤 貴明,山田 一夫,一谷 幸男
    • 学会等名
      日本心理学会第83回大会
  • [学会発表] Caffeine facilitates fear extinction in rats2019

    • 著者名/発表者名
      Kodai Kaseda, Takaaki Ozawa, Yukio Ichitani, Kazuo Yamada
    • 学会等名
      動物心理学会第79回大会
  • [学会発表] The effects of serotonergic lesion of dorsal raphe nucleus (DRN) and median raphe necleus (MRN) on fear extinction in rats2019

    • 著者名/発表者名
      S. NAKAZAWA, T. OZAWA, Y. ICHITANI, K. YAMADA
    • 学会等名
      Neuroscinece 2019, Annual meeting of Society for Neuroscinece
    • 国際学会
  • [学会発表] Neural correlates of interval timing in head-fixed mice2019

    • 著者名/発表者名
      Saya Yatagai, Kota Yamada, Kohei Yamamoto, Katsuyasu Sakurai, Koji Toda
    • 学会等名
      動物心理学会第79回大会
  • [学会発表] Laser induced auditory perception in Mongolian gerbil (Meriones unguiculatus)2019

    • 著者名/発表者名
      Tamai, Y., Uenaka, M., Ito, Y., Furuyama, T., Horinouchi, K., Murashima, N., Mithimoto, I., Toda, K., Hiryu, S. & Kobayasi, KI
    • 学会等名
      日本比較生理生化学会第41回大会
  • [学会発表] Understanding the properties of learning by extracting behavioral elements with machine learning in mice.2019

    • 著者名/発表者名
      Yamada, K. & Toda, K.
    • 学会等名
      日本動物心理学会第79回大会

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公開日: 2021-01-27  

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