研究課題/領域番号 |
19H01770
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
横澤 一彦 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (20311649)
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研究分担者 |
伊藤 浩介 新潟大学, 脳研究所, 准教授 (30345516)
浅野 倫子 立教大学, 現代心理学部, 准教授 (40553607)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 共感覚 / 色字共感覚 / 色聴共感覚 / 絶対音感 / 序数擬人化 / 感覚間協応 / 認知心理学 / 統合的認知 |
研究実績の概要 |
色字共感覚では一般的に、未知の文字には色を感じないが、「その新奇文字は既知文字のAに相当する」のように既知文字に対応づけて学習させると、すぐに既知文字の共感覚色が転移する形で新奇文字に色を感じるようになることが知られていた。そこで、色字共感覚の保持者に新奇文字(未知のタイ文字)を提示し、それぞれに異なる既知文字(平仮名)を1 文字ずつ対応づけて学習させた結果、既知文字の共感覚色が互いに異なる色であった場合に比べて、既知文字すべてが似た共感覚色を持つ場合は転移が起こりにくいことが分かり、共感覚色が文字の学習時に文字の弁別に使われ、学習を補助するという仮説と整合的な結果であり、Psychonomic Bulletin & Review誌の論文として採択された。色字共感覚の長期安定性の研究に取り組み、5~8年の期間を挟んだ色字対応づけの安定性のデータを収集中である。色聴共感覚の実験研究を行うとともに、共感覚と感覚間協応の関係、色聴共感覚と絶対音感の関係についても実験研究を行い、学会発表を行った。 序数擬人化共感覚について、大学生を対象に調査を行い、この種類の共感覚を持つ人、持たない人以外に、以前は持っていたが失ったと自覚している人が少数ながら一定数存在することを確認した。そして、これらの3グループそれぞれの人における数字とパーソナリティの対応付けかたの性質について明らかにするための予備的な実験を行った。 ドレミファソラシに色を感じる共感覚につき、新規の被験者をリクルートし、絶対音感との関係などについて、行動学的な調査を行った。また、絶対音感の脳メカニズムについて、脳波により検討を行った。さらに、マルチメディア刺激を提示することで色聴などの共感覚をインターネット上でオンライン調査するためのプラットフォームを開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
色字共感覚研究を深化させる研究として、「質感―文字共感覚」の実験研究を行ったが、予想通り両者が分離不可能な関係にあり、分析が困難となっているが、色字共感覚、色聴共感覚、序数擬人化に関する実験研究を順調に展開するとともに、論文化や学会発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
色字共感覚の長期安定性の研究に継続的に取り組み、論文化に必要な実験データの収集に努める。感覚間協応など、共感覚に似た認知を調べ、少数派である共感覚者の共感覚との関係の解明に取り組む。特に、共感覚の一種である序数擬人化共感覚(数字にパーソナリティを感じる共感覚)を持つ人、持たない人、過去には持っていたが発達段階で失ったと思われる人を比較し、発達との関係も視野に入れた検討を行う。ドレミファソラシに色を感じる共感覚の脳メカニズムを調べ、絶対音感との関係など明らかにする。また、オンライン調査のプラットフォームを利用した調査を開始するとともに、共感覚被験者プールのさらなる拡充を目指す。
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