研究課題/領域番号 |
19H01770
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
横澤 一彦 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (20311649)
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研究分担者 |
伊藤 浩介 新潟大学, 脳研究所, 准教授 (30345516)
浅野 倫子 立教大学, 現代心理学部, 准教授 (40553607)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 共感覚 / 色字共感覚 / 色聴共感覚 / 絶対音感 / 序数擬人化 / 感覚間協応 / 認知心理学 / 統合的認知 |
研究実績の概要 |
「共感覚 統合の多様性」(勁草書房)と題する、共感覚および感覚間協応についての学術書を出版した。また、5~8年にわたる色字共感覚の長期安定性に文字の親密度が関係することを明らかにした研究成果を国際的な査読付き学術論文誌である Consciousness and Cognition誌で発表した。また、日本心理学会学術集会における、感覚間協応に関する学会発表に対して、優秀発表賞が授与された。 序数擬人化について、一般成人を対象に大規模Web調査を実施し、600名を超える協力者からの有効回答が得られた。この調査により、現在もOLPを保有すると自覚する成人が約15%存在するのに加えて、過去には序数擬人化を保有していたが現在までに失ったと自覚する成人も約15%存在することが明らかになった。共感覚の喪失の可能性についての定量的研究は他に類を見ないものであり、共感覚のメカニズムを解明する上で示唆に富む。また、数字の擬人化の端緒について示唆を得るため、数字の学習期に当たる5~6歳の幼児約90名を対象に、序数擬人化傾向(各数字にどのような性別や年齢の印象を持つか)についての縦断調査を行った。 色聴などの共感覚をインターネット上でオンライン調査するために開発したプラットフォームを利用して300人規模の調査を行い、音や教科に色を感じる現象について、これまでにない大規模なデータを取得した。また社会還元として、これまでの研究成果を一般向けの図書として著書にまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍が長期化する中で、実験の実施に関しては深刻な影響を受けたが、共感覚に関する研究成果は、学術書や査読付き学術論文誌で順調に発表することができ、感覚間協応に関する学会発表に対して、優秀発表賞が授与された。特に、色字共感覚の長期安定性に関する学術論文がConsciousness and Cognition誌に掲載されたことは、長期間継続した縦断研究に基づく重要な研究成果となった。このように、当初の研究計画に沿って進められた研究成果が評価された。
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今後の研究の推進方策 |
共感覚や感覚間協応の性質をめぐる研究の成果をまとめるとともに、序数擬人化の保有率や発達過程上での喪失に関する大規模調査について、学会や学術誌での成果発表を目指す。また、共感覚オンライン調査のデータを解析し論文化に取り組むとともに、共感覚の脳メカニズムを調べ、絶対音感との関係などの解明を目指す。
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