研究課題/領域番号 |
19H01773
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
野村 理朗 京都大学, 教育学研究科, 准教授 (60399011)
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研究分担者 |
Rappleye Jeremy 京都大学, 教育学研究科, 准教授 (00742321)
池埜 聡 関西学院大学, 人間福祉学部, 教授 (10319816)
高橋 英之 大阪大学, 基礎工学研究科, 特任講師(常勤) (30535084)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 畏敬 / 自然 / 人工物 / 東洋思想 / マインドフルネス |
研究実績の概要 |
1.畏敬と創造性の関連に関わる研究:創造性にかかわる孵化期間中の拡散的創造性ならびに収束的創造性の各々に対する畏敬感情の影響について明らかにした。 2.畏敬が生じる際の神経基盤について、二種の畏敬の各々について、核磁気共鳴画像法により検討した。結果、主には左中側頭回の脱活性化が、二種の畏敬に共通することが明らかとなった。同脳領域の機能をふまえ、small-selfを促すという畏敬の念に特徴とされてきた機能にくわえて、個人の適応に関わる心的プロセスを神経活動の観点から示唆した。 3.欧米を中心としたマインドフルネス瞑想の普及に伴う社会的な言説分析を関連文献及び資料からレビューを完了。医療や心理領域における臨床技法としてのマインドフルネスがブーム化することにより、白人系マジョリティの価値観に由来する能力主義、啓蒙主義の言説が社会に浸透していく問題点を浮き彫りにした。同時に、畏敬、慈悲、包摂といったマインドフルネスの源泉に横たわる価値と方法論について、パーリ仏典の文献レビュ同仏典のエキスパートから情報収集を行った。 4.複数ユーザーに感情を想起させる円の運動パターンを自由にデザインするようもとめ、それらを教師データとして、感情に対応した図形の運動パターンの生成モデルの学習を深層学習(ここではGAN)を行った。その結果ユーザーに特定の感情を感じさせることが可能な円の上下運動を生み出す生成モデルの学習が可能になることを示した。 本畏敬プロジェクトにおいてはこの手始めに基本的な感情の表現から、今後は高次感情の畏敬にかかわる表現にまで発展できればと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
国内各誌(マインドフルネス研究等)をはじめ、国際学術雑誌においては、Cognition and Emotion、Scientific Reports、Frontiers in Psychology等への採択・掲載、各種学会シンポジウムの開催などにおいて、畏敬に関わる国内の研究基盤の確立に向けての進展が得られた。また投稿中の論文や、取得済みのデータ、また新たな実験計画にも着手しており、次年度にむけた準備とともに推進した。 加えて、臨床技法として普及するマインドフルネスに通底する個人化や商品化の問題について「日本マインドフルネス学会」にて報告。畏敬、包摂、社会変容に通じるマインドフルネスの可能性について総説論文を出版した。
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今後の研究の推進方策 |
方策1:畏敬の生物学的基盤(脳機能・構造)の検討 方法1: 実験参加者:健常成人 80名 脳の撮像:はじめに脳の構造を撮像し,続いて畏敬等の映像視聴中の脳活動を核磁気共鳴脳画像法(MRI: Magnetic Resonance Imaging)により撮像し,関与が予測される扁桃体,前頭眼窩野等を仮説領域とし,脳の構造・血行動態と課題の反応選択等の行動出力との関連を検討する。各種の心理評定尺度の評定値との相関解析を行う。また脳活動の個人差をよりきめ細かに記述するため遺伝子多型を解析し,心理評定および脳活動と包括的に明らかにする(検定力分析によりサンプル数を設定)。 方策2:人工物に対する”畏敬の念”の定量評価 方法:調査対象:健常成人1,000名 手続き:平成31年度に開発した心理評定尺度を用い,各対象(神・鳥居/ロボット・シャーマン/赤ちゃん・犬等)をオンライン調査により評価。畏敬との関連が予測される15種程度の心理評定尺度(気質5因子,文化的自己観,認知的完結欲求等)の調査・得点化したデータを基に妥当性評価。 方策3:構造的な格差や偏見、あるいは逆境的な家庭環境にさらされた青少年の苦悩に寄り添う米国のマインドフルネス・プログラム、Inward Bound Mindfulness Education(iBme)に焦点を当て、畏敬、包摂、慈悲といった価値の体現に資するマインドフルネスの具体的なあり方について探索していく。
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