研究実績の概要 |
乳児対象の高次な知覚発達の知見に基づき生後7-8ヶ月前後の注意処理の獲得を調べる実験的検討を行った。特に、乳児の注意研究で未開拓である「時間的負荷」を扱った。乳児を対象とした視覚的注意課題手続きの構築は、分担者の河原教授と行った。緊急事態宣言が発令され乳児実験は断続的に行った。接触の多い脳計測実験も難しく年度終了時に再開した。さらに国際学会参加も難しく国内学会中心にオンラインポスター発表を行った。またProceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America に論文が掲載された(Nakashima, Y., Kanazawa, S., Yamaguchi, M. K.Perception of invisible masked objects in early infancy.)。本申請の一つの目標である、抑制機能の発達を解明した研究で生後7ヶ月までに乳児の抑制機能は成人と同じように発達すること、それ以前の乳児は抑制機能が働かないため成人とは異なる世界を知覚していることを明らかにした。さらに、認知系の一般紙Cognitionにも発表した。(Tsurumi, S., Kanazawa, S., Yamaguchi, M. K., & Kawahara, J. Attentional blink in preverbal infants.)。成人を対象としたAttentional blinkを乳児を対象に行った実験で、連続して高速提示した2つのターゲット間の干渉をターゲット間の提示間隔を操作した実験である。実験の結果、生後7-8ヶ月の乳児でも成人と同じ注意の瞬きが生じ、作業記憶が十分発達していないと考えられていた7-8ヶ月児でも作業記憶への書き込みと遅延が生じることが示唆された。
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