研究課題
乳児を対象とした知覚発達の知見に基づき、生後7-8ヶ月前後の注意処理の獲得を調べる一連の実験研究を行った。乳児を対象とした視覚的注意課題手続きの構築は、分担者の河原教授と行った。2023年にはProceedings of the Royal Society Bに複数の特徴を誤って統合する「misbinding」という錯視現象を利用した成果を発表した。これは曖昧な知覚を安定させようとするフィードバック処理の関与により成立すると言われる。実験の結果、生後半年以降の乳児ではmisbindingの錯視が見え誤った特徴の統合が生じたが、生後半年未満の乳児はmisbindingの錯視が見えず特徴を誤って統合せずに曖昧な外界をあいまいなまま知覚することが判明した。これは特徴統合に関与するフィードバック処理の発達過程を検討するもので、生後半年未満の乳児は成人とは異なる知覚世界を持つ可能性があり、本研究の知見は、成人の意識世界の形成過程を知る手がかりの一つとなる。この成果は「赤ちゃんには錯視が生じない?」というプレスリリースを行い、日経新聞、ガーディアン紙などに「乳児は大人のように錯視は見ない」と報道された。同様の生後半年以下の意識過程を探る成果として、乳児にはメタコントラストマスキングが効果的でないという成果をCognitionに発表し、またDevelopmental Scienceでは「赤ちゃんは視野の上にある顔をチラ見する~生後半年の乳児の顔を見出す能力~」成果を公表しプレスリリースを行い、生後半年以上の乳児では視野の下にある顔よりも上にある顔に最初に目を向けやすく、しかも上にある顔をよく覚えることを明らかにした。これは成人が持つ,視野の下よりも上にある顔を瞬時にみつけ、その顔が誰でどんな表情かを判断できる「顔の上視野優位性」と呼ばれる現象であり、その発達を明らかにすることができた。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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