研究実績の概要 |
記憶は、再生されると変容する性質を持っている。記憶は、覚醒中だけでなく睡眠中にも再生されるので、睡眠中にも変容している可能性が高い。特に、レム睡眠中の脳の状態は覚醒中に近く、記憶は夢として再生されやすいため、「記憶の変容は、ノンレム睡眠中と比べて、レム睡眠中で大きい」(仮説1)可能性がある。一方で、ノンレム睡眠中には記憶の固定が生じることがわかっている。したがって、記憶は「ノンレム睡眠中に固定され、レム睡眠中に変容される」(仮説2)というサイクルを通して形成されている可能性がある。本研究では、ヒトを対象として、睡眠中のエピソード記憶の固定と変容をノンレム睡眠とレム睡眠を区別して計測し、上記仮説1および2を検証する。本年度は、予備実験を行い、夜間睡眠実験データを取得した。睡眠中の脳波は、国際睡眠段階判定基準に従って30秒おきに視察判定した。睡眠中の脳波スペクトルパワは、徐波3種類(0.5-4.0 Hz, 1.0-4.0 Hz, 0.5-1.0 Hz)、紡錘波2種類(8.0-12.0 Hz, 12.0-16.0 Hz)、ベータ波(> 20 Hz)、シータ波(4.0-8.0 Hz)の7帯域を算出した。睡眠中の脳波成分と記憶変容課題、連合記憶課題成績の相関関係を明らかにする。ビジランス課題の成績は、反応時間の中央値、変動係数(標準偏差/平均値)、見逃し率(2.5標準偏差以上の離れ値の回数、または反応に500ミリ秒以上かかった試行の回数)によって評価した。予備検討により、実験がルーチンとして実施可能であることが確認できた。
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