研究課題/領域番号 |
19H01778
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山内 卓也 東北大学, 理学研究科, 准教授 (90432707)
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研究分担者 |
都築 暢夫 東北大学, 理学研究科, 教授 (10253048)
山名 俊介 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (50633301)
宮内 通孝 岡山大学, 教育学研究科, 准教授 (70533644)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ガロア表現 / セール予想 / ジーゲル保型形式 / テータ作用素 |
研究実績の概要 |
今年度はガロア表現の保型性に必要不可欠なセール予想解決に向けて必要なテータ作用素の計算、クリスタリン表現へのリフトを計算するためのガロアコホモロジーの解析、およびガロア表現の詳細な解析を行った。さらに、GSp4 の場合に保型的な法p 表現の潜在的対角化可能性を示し、多くの場合のセール予想の重さの部分を解決した。 テータ作用素に関しては、2014年頃に得られた自身の結果を、さらに見直すことで新 しいテータサイクルを見つけ出すことに成功し、従来のものは重さに強い制限が付いてい たが、一般の重さに対するテータサイクルを定義することが可能となった。ガロアコホモロジーの計算を指針として、セール重さの古典的な定義をジーゲル形式にどのように拡張するかを考察し、指標の拡張類がどのような分岐の悪さを持つかによって重さが変動することを観測した。セール予想を解決する上で必要不可欠な部分は保型的な法p ガロア表現が与えられた場合、保型性を保つ良い性質を満たすリフトであるp 進ガロア表現の存在を示すことが重要である。この部分を示すためにガロア表現の局所的性質である潜在的対角化可能性について大域的手法を用いた解析をGSp4 の場合に実行した。その際に必要な要素として、Jacquet-Langlands 対応を用いたコンパクト形式上の代数的保型形式の解析、重さ0リフトの構成、パラホリック制限を用いた保型表現の格子の存在と悪い成分における局所成分の入れ替え等がある。これらの結果を統合することで既存の保型性持ち上げ定理を用いながら最終的にはBernet-Lamb-Gee-Geraghty-Taylor, Thorne による保型性持ち上げ定理を適用することで所望の結果を導く事に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ガロア表現に関わる周辺分野の進展が目覚ましく、様々な知識・技術を援用しつつ多角的な研究が可能となりつつあり、これまで証明できなかった部分にも手が届くという状況になりつつあることが要因の一つである。また、ガロアコホモロジーの計算を詳細に行うことでセール重さの定式化に見通しが立ったことが大きい。さらに、保型表現側ではArthur分類による保型形式の分類が目覚ましく、難しい理論ではあるが、この分野の知識・技術を習得することは必要不可欠であった。しかし、幸運にも共同研究者のHenry Kim (トロント大)と若槻聡(金沢大)とのジーゲル保型形式に対する等分布性定理に関する共同研究でArthur分類について多くの知見を得た。またHenry Kimとの共同研究においては保型形式の具体的構成を続けており、これらはガロア表現と保型形式の対応を理解する上で重要な役割を果たす。このように、周辺分野の発展した内容を適宜自身の研究に取り入れながら研究を行ったことが、研究が順調に進展している理由である。
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今後の研究の推進方策 |
ガロア表現の保型性の研究をさらに推進するためには保型形式の基礎研究の水準の底上げが必要不可欠である。 そのため申請者はは保型形式の表現論、幾何、数論を研究してきた。 またガロア表現の変形環の研究も最新の導来代数幾何の文脈で理解する必要があることがわかっている。 既存の設定では証明できることに限界があり, これを進化(深化)させていく必要がある。今後は導来幾何の文脈でガロア表現の保型性を論じる必要があり、これらの技術・知識を習得し今後の研究に活かす。
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