研究課題/領域番号 |
19H01779
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
戸田 幸伸 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 教授 (20503882)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | Donaldson-Thomas不変量 / 連接層の導来圏 / 行列因子化 |
研究実績の概要 |
今年度は昨年度に導入した局所代数曲面上の圏論的DT理論の研究を更に押し進めた。まず、局所代数曲面上のDT圏に圏論的Hall代数の構造が入ることを示した。一般にHall代数はある種のアーベル圏から定まる代数構造で、表現論などで重要な役割を果たす。通常の代数曲面の場合にはPorta-SalaによってKapranov-Vaserrotのコホモロジー的Hall代数を圏化する圏論的Hall代数の構造が入ることが示されていた。局所代数曲面の場合は、Porta-Salaの圏論的Hall代数の構造がArinkin-Gaitsgoryの特異台の概念と整合することを証明することで、圏論的Hall代数の構造が入ることを示した。更にこの圏論的Hall代数を用いて、局所代数曲面上のPandharipande-Thomas圏にWely代数の圏化作用が入ることを示した。この結果は曲線の数え上げ幾何学と幾何的表現論との関係を圏のレベルで実現したものといえる。 今年度は更に、局所代数曲面上のDT圏に対する窓定理を証明し、様々な場合にDT圏の圏論的壁越え公式を証明した。通常の窓定理は簡約代数群のアフィン代数多様体への作用による商スタックの場合に先行研究が存在し、GIT商の変異による導来圏の振る舞いを調べるのに有効な道具であった。今年度の結果は、類似の窓定理がDT圏に対しても成立することを示したものといえる。また上述の圏論的Hall代数の構造と合わせて、局所代数曲面のPT圏に対する壁越え公式予想を提唱し、特別な場合に証明した。これらの結果は昨年度発表したプレプリントに付け加え、170ページ以上のプレプリント「Categorical Donaldson-Thomas theory for local surfaces」として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
局所代数曲面上のDT理論について、圏論的Hall代数や窓定理など重要な性質が成り立つことが証明でき、様々な応用を見出したため。
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今後の研究の推進方策 |
DT圏の圏論的壁越え公式はこれまでのところ「simple wall-crossing」という最も単純な壁越えの場合にしか示すことが出来ていない。このsimple wall-crossingの範疇から外れたより複雑な状況での圏論的壁越え公式の研究を推進する計画である。
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