研究課題/領域番号 |
19H01782
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
加藤 周 京都大学, 理学研究科, 教授 (40456760)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 半無限旗多様体 / Schubert多様体 / Richardson多様体 / Borel-Weil-Bottの定理 / Demazure指標公式 / 非対称Macdonald多項式 / 量子ループ代数 / Frobenius分裂性 |
研究実績の概要 |
半無限旗多様体(の形式モデル)のSchubert部分多様体と同じ閉点集合を持つスキームを具体的に構成し、それが定義方程式系に無限正則列を持つ正規多様体であることを確立し、また半無限旗多様体の(形式モデルの)Schubert多様体が正規多様体でありアフィン・リー代数のレベル0表現を現論的な対応物としてBorel-Weil-Bott型定理およびDemazure指標公式に類似する直線束の大域切断の記述を持つことを示し、さらにこれを用いることにより半無限旗多様体の同変$K$群にひとつの定義を与えた論文の最終版を仕上げ、受理された。
また、半無限旗多様体の直線束に適切な捻りを加えることにより非対称Macdonald多項式のパラメタの無限極限における特殊化の加群論的実現(すなわち、指標をとるとその多項式となる加群の構成)を行った論文のの最終版を仕上げ、受理された。
並行して最初の論文に出現する記述が適切な普遍性を満たす唯一のものであることを確立した。具体的には半無限旗多様体の射影座標環をアフィン・ループ量子群の表現論を用いて書き下し、その記述から出発してそのような多様体の基本性質、 すなわち正規性やFrobenius分裂性などを確立した。その後、上記論文の結果を一部拡張してBraverman-Finkelbertならびに申請者によって既に得られている半無限旗多様 体の帰納モデルに関するコホモロジー論的な主結果(これらは通常の有限次元旗多様体の場合に関して言えばいわゆるBorel-Weil-Bottの定理と Demazure指標公式の類似物とみなせる)の形式モデルへの移植を$2$でない任意標数の体上で行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実際に理論を完成させて論文として仕上げる部分のプロセスに若干時間が掛かっているがそれ以外は概ね研究計画に沿った線で結果を得ることができている。
ただ、前倒し交付申請を行って企画した昨年2~3月のフランス・ポアンカレ研究所滞在による研究の促進については本人都合による一時帰国中にコロナウイルス問題が広がってしまい次々と予定が変わり人が去っていったのちに最終的に研究所自体が閉鎖されてしまったこともあって中途半端に終わってしまった。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度までに得た半無限旗多様体やそのSchubert部分多様体、およびRichardson多様体に関するその正規性の証明を含む基礎的な結果 を発展させる。その一つの応用として半無限旗多様体上の大域切断生成な直線束の各Richardson多様体への制限の大域切断の空間を記述する。 その後、半無限旗多様体の同変K群の(より)正しい定義やその詳細な構造を研究する。具体的には半無限旗多様体上の適切な同変準連接層のクラスに は冪零double affine Hecke環(の圏論化)が作用すると考えられるのでその作用の記述およびその作用から生じる表現の構造、およびそれと適 切な意味での半無限旗多様体上の交叉理論との関係を理解する。
そのような準備のもとで、半無限旗多様体の同変K群とaffine Grassmann多様体の同変K群、および旗多様体の同変量子K群の構造を比較する。affine Grassmann多様体の同変K群はBezrukavnikov-Finkelberg-Mirkovic, Lam-Schilling-Shimozonoらの研究によってかなり詳細な記述が行わ れている。また、affine Grassmann多様体の同変K群と旗多様体の同変量子K群の間に密接な関係があることも予想されている。半無限旗多様体の同変K群と旗多様体の同変量子K群の比較は半無限旗多様体のRichardson多様体の特異点に関する命題に帰着されると考える根拠があるのでそれを押し進めて上記3つの対象を結びつけることを試みる。
もしそれらがうまくゆかないか余裕があればそれ以外の半無限旗多様体の幾何学的表現論における諸構成や半無限旗多様体の型式モデルと因子化の関係を追求する。
|