研究課題/領域番号 |
19H01793
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
種村 秀紀 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (40217162)
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研究分担者 |
竹居 正登 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (60460789)
今村 卓史 千葉大学, 大学院理学研究院, 准教授 (70538280)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 無限粒子系 / ランダム行列 / 確率微分方程式 / 相転移 / 浸透モデル |
研究実績の概要 |
本研究課題では、相互作用をもつ無限粒子系の確率方程式による表現とその一意性についての研究を行っている。(長田氏、河本氏、江崎氏との共同研究)当該研究期間中に、ブラウン無限粒子系に対応するディリクレ形式の一意性を示した論文、そして確率微分方程式の解の一意性の鍵となる条件((IFC条件)を満たすための十分条件を与えた論文がそれぞれ受理、出版された。さらに拡散型、飛躍型過程についての研究成果に加えて、相互作用にハードコアがある場合にも拡張できることを示した。 また、エルミート多項式の精密な評価を用いて、有限粒子系から無限粒子系の収束を示し、そのソフトエッジ型極限の方程式の形が決まることを厳密に導いた。その証明で鍵となる相関関数の評価は一様性と精密性が高い新しいもので、関連研究でも適用が期待できる。 多種類粒子系で、同種類のクラスターが大きくなると、さらに新しい同種の粒子が集まりやすいという相互作用をもつ確率モデルの解析を行っている。(Rahul Roy氏との共同研究)このモデルにおいては、粒子の死滅、生存だけではなく、生存の形態が多々あることを示した。1つは有限種類の粒子が生き残る場合、もう一つは無限種類の粒子が生き残るという場合である。さらに、無限種類の粒子の生存も局所的に集中する場合と広範囲に広がる場合があることも導いた。生存の形態のさらなる細かい分類も平均場近似により示唆することができた。つまり、複数の相転移現象が起きることを意味している。この結果は伝染確率モデルとして様々な応用に期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目的である「粒子系の相転移現象の解析」について、無限粒子系を表す確率微分方程式の一意性からの切り口での研究が1つの主題であるが、拡散型、飛躍型に加えて剛体球の系についても一般化をすることができた。さらに、確率微分方程式を解析するうえで、大切である係数等の正則性についても深い結果を得た。 また、比較的簡単な相互作用からなる粒子系で相転移が多数あるモデルを提案している。このモデルも相転移現象の解析の有効な手段となると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
末尾σ加法族と相転移現象の関係をさらに深く調べる方向で研究を進めていく。これまでに確率微分方程式の強解の存在と一意性と末尾σ加法族の対応を与えたが、様々な相転移現象に対しても、末尾σ加法族との関係が深いことが予想できるため、解析的に厳密にその関係を明らかにしていく。そのために、国内外の研究者との交流により新たな知識を得るとともに、議論を通じて発展させていくことを今後の研究の推進方策とする。
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