研究課題/領域番号 |
19H01803
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
根上 生也 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 教授 (40164652)
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研究分担者 |
小関 健太 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 准教授 (10649122)
中本 敦浩 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 教授 (20314445)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 位相幾何学的グラフ理論 / 被覆グラフ / ビッグデータ解析 / 平面被覆予想 |
研究実績の概要 |
本研究の1つの研究テーマである「平面被覆予想」を解決するためには,有限な平面的被覆を持つ連結グラフ(基底グラフ)が射影平面に埋め込み可能であることを証明する必要がある。過去の研究成果により,仮定されている平面的被覆が正則である場合,すなわち,被覆上に群の作用があり,同一の頂点に射影される頂点どうしがその群作用で変換し合える場合には,上述のことが証明できることがわかっている。そのため,これまで平面的被覆に群作用がない場合にどのように対処すればよいかという理論が展開され,グラフ・マイナー理論と関連させて,予想の反例となるグラフを絞り込んでいく研究が主流となっていた。 今年度は発想を変えて,群作用のあるグラフによって与えられた平面的被覆を被覆することを考えた。そのようなグラフの存在は,代数的トポロジーと群論の知識を組み合わせることで容易に証明することができるが,そのグラフが群作用を保存した形で平面や球面に埋め込めるという保証がなく,これまでに展開されてきた理論が適用できない。そこで,そのようなグラフをあえて球面以外の閉曲面に埋め込み,その閉曲面上の群作用の可能性を議論し,もとの平面的被覆が「rotation-compatible」という条件を満たせば,それが被覆する基底グラフは平面被覆予想の反例にならないことを証明した。この成功によって,反例を絞り込むのとは逆に,反例とならないものを探究して予想の解決を図るという新しいスキームを提案することができた。 こうした平面被覆予想へのアプローチと並行して,閉曲面上のグラフの種々の彩色問題やグラフ・マイナーについて,いくつかの研究成果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平面被覆予想に対して新しいアプローチのスキームを提案できたことは大きく,その周辺分野での研究成果も多数得られ,純粋な数学の理論研究としては十分な成果が得られているので,「おおむね順調に進展している」と評価できる。しかし,ビックデータ解析という視点での考察が不十分だと思われる。前年度までに,巨大なネットワークが被覆グラフの構図を持つ場合,その基底グラフの探索によって,巨大ネットワーク上のある種の組合せ的構造を高速で発見できることが明らかにしたが,巨大ネットワークが被覆グラフの構造を持たない場合の考察は,構想までであり,まだ成果として示せる形にはなっていない。 上述のように,平面被覆予想に対しては大きな進展があったが,コロナ禍のため,トポロジーにおける被覆空間の理論に詳しい海外の研究者との連携が予定通りに進めることができなかったので,理論を構築してからそれを検証するまでにかなり時間を要してしまった。その一方で,学内の情報系の研究者と連携する機会があり,グラフ理論を用いて超巨大ネットワークを解析するという視点を獲得でき,応用面での今後の進展が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍のために対面のみによる研究集会を実施することはできなかったが,今年度の経験を活かして,対面とオンラインのハイブリッドによる研究集会をさらに円滑に行うための工夫を講じていく。また,情報系の研究者との連携をさらに進め,数学の理論研究の枠を越えた研究を展開し,応用価値のある研究成果を目指す。
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