研究実績の概要 |
本研究では、ツイスト角を制御したファンデルワールストンネル接合素子を舞台として、運動量・エネルギーが保存された共鳴トンネル現象を観測・解析することで、原子層物質のバンド構造を解明することを目的としている。本年度は、単層グラフェン/六方晶窒化ホウ素/三層グラフェン、グラファイト/六方晶窒化ホウ素/Twisted二層グラフェン、および遷移金属ダイカルコゲナイド系二次元結晶トンネル接合素子の試料作製と量子輸送特性測定を進めた。中でも、単層グラフェン/六方晶窒化ホウ素/三層グラフェントンネル接合素子においうては、共鳴トンネル効果を観測することで三層グラフェンのバンド構造をを決定し、3層グラフェンのバンド構造を記述するために用いられる強束縛近似モデルのパラメーターを実験的に決定することができた[Y. Seo, S. Masubuchi et al., APL (2022)]。さらに、グラファイト/六方晶窒化ホウ素/Twisted二層グラフェン素子においては、六方晶窒化ホウ素膜中に存在する欠陥準位を介したトンネル現象を観測することに成功した。欠陥準位を介したトンネル伝導を解析することにより、Twisted二層グラフェン中のAA・AB・BA積層領域の電子状態密度を実験的に決定することができた[Y. Seo, S. Masubuchi, et al., APL (accepted)]。さらに、一連の研究で培った試料作製技術を遷移金属ダイカルコゲナイド素子にも展開することで、複数層WSe2、MoS2のバンド構造を決定することができた。
|