それまでの予備的な研究により、ナノ粒子の重心運動を効率的に冷却する電場冷却の手法を確立できていたが、冷却の下限は主に真空度によって制約されていることがわかっていた。既存の真空槽では、設計上の問題から真空度を高めることが難しいとわかったため、まず新しい真空槽の設計および製作に取り組んだ。その結果、実際にナノ粒子を捕捉するための部品を真空槽内に設置した状態で、1×10^-6 Pa以下の超高真空領域まで到達できる真空槽の作成に成功した。また、この真空槽の設計・作成にあたり、従来行われてきたナノ粒子の真空槽内への導入法では真空槽の汚染が強いことから、新たな乾式捕捉手法の開発に取り組み、パルスレーザーによって粉末を舞い上げてレーザー光中に導入する手法を実現した。これらの過程を踏まえ、新たな真空槽の周りに新しいレーザー・光学部品からなる、ナノ粒子捕捉・観測のための光学系・電子回路系を構築し、ナノ粒子を捕捉・冷却できる環境を整えた。ナノ粒子の観測精度が高いほど、より低い温度へと冷却することが可能となることから、光学系の改良に特に予算や時間を割いた。より安定な捕捉のため、また光強度を高くして振動周波数を高くし、基底状態の温度を高くするために、本研究では捕捉レーザー光を打ち返して一次元光格子を形成した。光格子の場合、必然的に高い出力のレーザー光が打ち返されて戻ってくるため、この戻り光をうまく利用する形でナノ粒子を高い位置感度で観測できる光学系を構築した。
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