研究課題/領域番号 |
19H01825
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
有賀 哲也 京都大学, 理学研究科, 教授 (70184299)
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研究分担者 |
奥山 弘 京都大学, 理学研究科, 准教授 (60312253)
八田 振一郎 京都大学, 理学研究科, 助教 (70420396)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 表面界面 / 超薄膜 / 低次元物質 / 単分子層磁性 |
研究実績の概要 |
本研究は、新しい低次元電子材料として注目されている金属ハライドなどの層状物質を極限まで薄くした、単分子層、2分子層物質の電子スピン物性と2次元電気伝導性を明らかにすることを目的としている。 当該年度においては、Bi2Te3(テルル化ビスマス)の単分子膜、2分子膜、……を層数制御してエピタキシャル成長させ、その電気伝導性を精密測定することに成功した。電気伝導度の層数依存性は、層数に比例するのではなく、層数ー1に比例することを示した。すなわち、Bi2Te3における電気伝導では、Bi2Te3層内ではなく、隣接するBi2Te3層間ギャップが伝導経路になっている。この仮説を検証するため、第一原理計算を行ったところ、フェルミ準位付近の状態は層間に局在していることがわかり、仮説が正しいことを示した。 また、FeBr2(臭化鉄)を、単層、2層などの膜厚を精密制御して、半導体基板上に作成する方法を開発した。シリコン表面上に、シリコンのダングリング結合を終端させるバッファー層としてインジウム2原子層/Bi単原子層の複合層を作成することにより、このうえにFeBr2の単分子層、2分子層をエピタキシャル成長させることに成功した。作成した分子層に関しては低速電子回折の動力学解析により構造決定し、目的とする単分子層等ができていることを確認した。 この試料について角度分解光電子分光によりバンド構造を決定し、第一原理計算により得た単分子層、2分子層のバンド構造、スピン基底状態との比較を行い、結晶性のよいFeBr2層が得られたことを重ねて確認するとともに、その電子状態、磁性に関して興味深い知見を得た。現在、その物理的メカニズムを検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画の成否に決定的に重要な、臭化鉄の単分子層、2分子層の作成法を確立したことは、今後の研究の進展にとって極めて重要である。開発した手法は、類似の構造を有する層状物質単分子層のエピタキシャル成長にも有効であり、今後の展開に繋がる。臭化鉄単分子層、2分子層に関しては、光電子分光と第一原理計算によりその電子状態の特徴を明らかにしつつあり、今後の研究展開の方向性が定まったと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、FeBr2の磁性と電子状態に着目し、単層、2層における特異的な性質を明らかにすることが第一の目標である。また、一層、二層と層数を増やすにつれてバルクとしての性質が現れてくる様子を追跡し、単なるファンデルワールス相互作用ではない、層間相互作用の起源、性質を明らかにすることが第二の目標である。
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