研究課題/領域番号 |
19H01827
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
池田 直 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (00222894)
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研究分担者 |
沖本 洋一 東京工業大学, 理学院, 准教授 (50356705)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 電子強誘電性 / RFe2O4 / YbFe2O4 / LuFe2O4 / YFe2O4 / electronic ferroelectric / ferroelectrics |
研究実績の概要 |
強誘電体材料は現代の電子回路技術全てに必須であり、その強誘電体研究と工業生産において日本は世界的リーダーにある。近未来の電子回路技術では、超高周波回路や超小型誘電体材料が必要であり、それに対応する強誘電体の開発が求められている。我々が世界に先駆けて発見した電子強誘電体は、今までの強誘電体と異なりイオン変位ではなく電子の偏った分布から強誘電性が現れる。このため超高速動作や、省エネルギー動作が期待されている。本研究は、精密結晶合成 技術と超高速光応答測定技術を駆使し、電子型強誘電体が持つ新奇で高速な誘電特性の解明・開拓を行う。我々は当概念の提唱者であり、世界に先んじて電子強誘電体の基礎を確立することが目的である。 本年度は良質な単結晶作成と非線形光学測定が進行し、二次高調波発生(SHG)測定の偏光方位と非線形光学テンソル測定から、電気分極がCmの空間群をもつことを決定し、scientific reports に出版することができた。この成果は、10年以上続いてきた、常温に電子強誘電体が実在するか否かという論争に終止符を打つものであり、広報発表をし各方面に報告された。 現在は電歪応答測定と電場SHG測定を実施し、電子型強誘電体の抗電場が 5V/cm程度と、著しく小さいことを論文公表準備中である。 更に現在、非線形光学応答が fsec領域まで、超高速に応答することを確かめた。強誘電体の量子力学的起源であるシフトカレント効果に起因した電子の応答現象と考えられ、電子強誘電体研究の画期的進展のトリガーを得たと考え、理論グループも含め新たな研究体制を構築している。 このように本研究において、電子強誘電性が今後の低エネルギー・超高速に動作する新しい強誘電体材料として、有望であることを示す結果を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初目的であった、RFe2O4の自発電気分極の存在と強誘電体であることの確定研究を世界に報告する、という当初の目的は達したと考えている。この成果は予定していた、高品位単結晶作製、非線形光学応答測定、電歪 応答測定の実施によるものであり、計画は順調に推移した。 さらにこの結晶の非線形応答を精査するうちに、非線形光学応答が、想定以上に速いfsec領域で実現することを示す結果を、最近得ることができた。これは当初計画を超え、新しいサイエンスの萌芽であり、当初計画想定を超えた内容となった。
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今後の研究の推進方策 |
最近新たに見出すことができた、非線形光学応答が極めて高速に、fsec領域で発生する現象は、今後電子強誘電体研究の進むべき方向を示唆している。 当初我々の常温に電子強誘電体が実在するか否か、という論争の決着を超えて、「常温に電子強誘電体」が、量子効果を内包しながら、現在の強誘電体がもつ様々な制約を、3桁以上の時間スケールやエネルギースケールで克服することを示すデータとなっている。 当初我々が描いていた、「電子移動に伴う分極反転」現象に、量子効果が顕になることは、基礎物性研究として画期的に重要な成果であり、解析を進めると共に、新研究体制の構築準備を行っている。
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