酸化鉄系電子誘電体の精密合成と精密光・誘電応答の研究

2021 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 19H01827
• 研究機関: 岡山大学
• 研究代表者: 池田 直 岡山大学, 自然科学学域, 教授 (00222894)
• 研究分担者: 沖本 洋一 東京工業大学, 理学院, 准教授 (50356705)
• 研究期間 (年度): 2019-04-01 – 2022-03-31
• キーワード: 電子強誘電体 / RFe2O4 / LuFe2O4 / YbFe2O4 / YFe2O4

研究実績の概要

物質中で、電子が対称中心を消失するように自発的に整列する電子強誘電体は、今まで知られていた強誘電体よりも遥かに高速・低エネルギーで動作することが期待され、その存在の確認と基礎理解が待たれていた。
本研究により、複電荷鉄化合物RFe2O4(R:希土類)が室温より高い相転移温度を持つことや磁気秩序が共存するなど、特異な電気磁気相関応答を示すことが世界で初めて確定した。この10年間、本物性の存在確認について、世界的な研究が行われてきたが、我々は化学当量性を精密に制御する単結晶合成方法を開発し、初めて化学当量の正確な単結晶を得た。これに対し今まで観測されていなかった強誘電性を示すSHG測定を、世界に先駆けて報告することができた。
さらに、誘電緩和分布を正当に評価する新しい解析方法（逆インピーダンス解析）を、電機磁気効果観測に利用することを着想し、今まで知られていた誘電分散解析よりも電荷秩序ドメイン分布評価を伴う、より精密な解析を実現した。これを用い、世界に先駆けてRFe2O4の電磁気磁気応答の精密解析を報告した。
この精密合成方法の知見を活かし、化学当量の単結晶薄膜の合成にも成功した。
さらに電子型強誘電体のみならず、従来型の強誘電体においても、自発分極の存在するときには内部電場が発生しており、これに伴い伝導バンド構造が屈曲することや、これによるキャリア移動のため、強誘電体に接触するナノ金属の電荷状態が変調されることも見出し、報告することができた。
これらの成果は、国際会議（招待講演含む）、国内会議で報告した。またいくつかの報道機関を通じ広報された。

現在までの達成度 (段落)

令和3年度が最終年度であるため、記入しない。

今後の研究の推進方策

令和3年度が最終年度であるため、記入しない。

研究成果

• [国際共同研究] Oak Ridge National Laboratory(米国)
  • 国名: 米国
  • 外国機関名: Oak Ridge National Laboratory
• [雑誌論文] Direct evidence of electronic ferroelectricity in YbFe2O4 using neutron diffraction and nonlinear spectroscopy (2021)
  • 著者名/発表者名: Fujiwara K.、Fukada Y.、Okuda Y.、Seimiya R.、Ikeda N.、Yokoyama K.、Yu H.、Koshihara S.、Okimoto Y.
  • 雑誌名: Scientific Reports 巻: 11 ページ: 4277
  • DOI: 10.1038/s41598-021-83655-6
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Observation of Magnetoelectric Effect of Charge-Ordered Ferroelectric LuFe₂O₄ by Inverse Capacitance Analysis (2021)
  • 著者名/発表者名: Fukada Yukimasa、Ikeda Naoshi
  • 雑誌名: Journal of the Physical Society of Japan 巻: 90 ページ: 113705
  • DOI: 10.7566/JPSJ.90.113705
  • 査読あり
• [雑誌論文] Analysis of Glass Behavior of Lu₂Fe₃O₇ with Distributed Equivalent Circuit Model (2021)
  • 著者名/発表者名: Fukada Yukimasa、Fukuyama Ryota、Fujiwara Kosuke、Yoshii Kenji、Shigematsu Kei、Azuma Masaki、Ikeda Naoshi
  • 雑誌名: Journal of the Physical Society of Japan 巻: 90 ページ: 024710～024710
  • DOI: 10.7566/JPSJ.90.024710
  • 査読あり
• [雑誌論文] Crystallographical and morphological changes in charge-ordering transition of RFe₂O₄ (R: Y, Lu) investigated by transmission electron microscopy (2021)
  • 著者名/発表者名: Horibe Y.、Mori S.、Ikeda N.、Yoshii K.、Maeno H.、Murakami Y.
  • 雑誌名: Ferroelectrics 巻: 584 ページ: 20～30
  • DOI: 10.1080/00150193.2021.1984762
  • 査読あり
• [雑誌論文] Single domain growth and charge ordering of epitaxial YbFe₂O₄ films (2021)
  • 著者名/発表者名: Sakagami Takumi、Ota Reika、Kano Jun、Ikeda Naoshi、Fujii Tatsuo
  • 雑誌名: CrystEngComm 巻: 23 ページ: 6163～6170
  • DOI: 10.1039/D1CE00834J
  • 査読あり
• [雑誌論文] Light reflectance and photoelectron yield spectroscopy enable acceptor level measurement in p-type Ba_1?<i>x</i>TiO₃ semiconductor (2021)
  • 著者名/発表者名: Fujii Saya、Kano Jun、Oshime Norihiro、Higuchi Tohru、Nishina Yuta、Fujii Tatsuo、Ikeda Naoshi、Ota Hiromi
  • 雑誌名: Journal of Applied Physics 巻: 129 ページ: 084105～084105
  • DOI: 10.1063/5.0033761
  • 査読あり
• [雑誌論文] High valence states of Pd supported on ferroelectric BaTiO₃ driven by electric polarization (2021)
  • 著者名/発表者名: Yoshida Tasuku、Kano Jun、Mizumaki Masaichiro、Tamenori Yusuke、Nitta Kiyofumi、Kato Kazuo、Hinokuma Satoshi、Oshime Norihiro、Hirose Satoshi、Mikami Hitoshi、Ikeda Naoshi、Fujii Tatsuo、Nishina Yuta、Okubo Tomoko
  • 雑誌名: Applied Physics Letters 巻: 119 ページ: 092904～092904
  • DOI: 10.1063/5.0066289
  • 査読あり
• [学会発表] 鉄欠損抑制によるRFe2O4 (R=Yb,Lu)の3次元電荷秩序温度の向上 (2022)
  • 著者名/発表者名: 藤原孝将, 深田幸正, 清宮僚人, 亀井朝日, 鈴木孝義, 池田直
  • 学会等名: 日本物理学会 第76回年次大会,
• [学会発表] 第二次高調波発生から見たLuFe2O4 結晶の電子強誘電性 (2022)
  • 著者名/発表者名: 于洪武, 森田敦也, 石川忠彦, 腰原伸也, 深田幸正, 藤原孝将, 池田直, 岸田晶穂, 伊藤毅, 岩井伸一郎, 沖本洋一
  • 学会等名: 日本物理学会 第76回年次大会,
• [学会発表] Electronic ferroelectric LuFe2O4 crystal Time-resolved SHG measurement (2021)
  • 著者名/発表者名: 于洪武、田久保耕、石川忠彦、腰原伸也、深田正幸、西田銀一、池田直、藤原孝将、 大田伶佳、阪上拓巳、 藤井達生、 岸田晶穂、 伊藤弘毅、 岩井伸一郎、沖本洋一
  • 学会等名: MRM2021
  • 国際学会
• [学会発表] Electronic Ferroelectricity from the Polar Charge Ordering of RFe2O4 (2021)
  • 著者名/発表者名: Naoshi Ikeda, Kosuke Fujiwara, Hongwu Yu, Yukimasa Fukada, Tatsuo Fujii, Yoichi Okimoto
  • 学会等名: MRM2021
  • 国際学会 / 招待講演
• [学会発表] Short-Range Spin Ordering near Room Temperature in Stoichiometric LuFe2O4 (2021)
  • 著者名/発表者名: Kosuke Fujiwara, Yukimasa Fukada, Ginichi Nishida, Yohei Okuda, Naoshi Ikeda, Kazuhisa Kakurai, Matthias Frontzek
  • 学会等名: MRM2021
  • 国際学会
• [学会発表] Time-resolved Nonlinear Spectroscopy of the Electronic Ferroelectric iron oxide Lu Fe2O4 (2021)
  • 著者名/発表者名: H. Yu, Y. Fukada, R. Kiyomiya, N. Ikeda, H. Itoh, S. Iwai, T. Ishikawa, S. Koshihara, and Y. Okimoto
  • 学会等名: Photoinduced Phase Transitions and Cooperative Phenomena, 2021
  • 国際学会
• [学会発表] 電子強誘電体Lu Fe2O4結晶の時間分解SHG測定 (2021)
  • 著者名/発表者名: 于洪武, 田久保耕, 石川忠彦, 腰原伸也, 藤原孝将, 深田幸正, 西田銀一, 池田直, 沖本洋一
  • 学会等名: 日本物理学会 2021年秋季大会
• [学会発表] 化学当量的なYFe2O4の特異な電荷秩序相の発見 (2021)
  • 著者名/発表者名: 藤原孝将, 清宮僚人, 深田幸正, 西田銀一, 亀井朝日, 鈴木孝義, 池田直
  • 学会等名: 日本物理学会 2021年秋季大会
• [学会発表] 電子強誘電体YbFe2O4薄膜結晶の非線形光学測定 (2021)
  • 著者名/発表者名: 于洪武, 田久保耕, 石川忠彦, 腰原伸也, 阪上拓巳, 大田怜佳, 藤井達生, 深田幸正, 藤原孝将, 池田直, 沖本洋一
  • 学会等名: 日本物理学会 2021年秋季大会
• [学会発表] 緩和時間分布を考慮したLuFe2O4の磁場中逆容量解析 (2021)
  • 著者名/発表者名: 深田幸正, 西田銀一, 藤原孝将, 狩野旬, 藤井達生, 池田直
  • 学会等名: 日本物理学会 2021年秋季大会
• [備考] 室温で結晶内の電子秩序が強誘電性を生み出すことを発見－超高速電子材料の実現へ－
  • URL: https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id812.html?fbclid=IwAR1Eg1YVMaXXzHolZ8pUNiUaZNuPYDwXSOHiugJ_BGq1lpLSfqe8SeoibzI
• [備考] 室温で結晶内の電子秩序が強誘電性を生み出すことを発見
  • URL: https://www.titech.ac.jp/news/2021/049042
• [備考] 東工大ら，鉄セラミックス材料の強誘電性を発見
  • URL: https://optronics-media.com/news/20210222/72245/
• [備考] 室温で強誘電性を生み出す鉄セラミック材料を発見
  • URL: https://eetimes.itmedia.co.jp/ee/articles/2102/25/news040.html
• [備考] 室温で結晶内の電子秩序が強誘電性を生み出すことを発見 ～超高速電子材料の実現へ～
  • URL: https://www.nanonet.go.jp/ntj/topics_ntj/?mode=article&article_no=5503