研究課題/領域番号 |
19H01831
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研究機関 | 国立研究開発法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
吉原 文樹 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所小金井フロンティア研究センター, 主任研究員 (80525907)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 超伝導量子ビット / 量子ビット測定 / 交差共鳴 |
研究実績の概要 |
測定対象の超伝導量子ビットとして、通常の磁束量子ビットよりもコヒーレンス特性に優れたコンデンサ短絡型磁束量子ビットを用いる。計画提案当初は磁束量子ビット-磁束ドライブライン間および磁束量子ビット-共振回路間の結合はいずれも磁気的結合を想定していたが、コンデンサ短絡型磁束量子ビットの場合には、磁束量子ビット-磁束ドライブライン間は磁気的結合で磁束量子ビット-共振回路間は電気的結合を持つサンプルが構造上自然である。このような、異なる結合を持つサンプルで交差共鳴バイアス法による量子ビットの測定が可能であるかどうかについて、ジョセフソン接合を一つ含む磁束量子ビットとLC共振回路がインダクタを共有する回路の回路Hamiltonianを導出することにより調べた。その結果、回路Hamiltonianは量子Rabi Hamiltonianで良く記述できることが分かった。一方で、磁束量子ビットのHamiltonianおよび、固有状態や固有状態間の遷移行列要素について詳細に調べた結果、磁束演算子のみを考える場合には磁束量子ビットの最低二準位のみを考慮すれば良かったが、電荷演算子を考える際には磁束量子ビットの第二励起状態以上を無視できなくなることが分かった。本結果から得られた知見は、本提案手法を電場ドライブにする場合および磁束量子ビット-共振回路間を電気的結合にする場合を含めるように拡張するための不可欠な情報を与えてくれる。なお、本結果はScientific Reportsに採択された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コンデンサ短絡型磁束量子ビット-共振回路のサンプル作製は完了し、磁場センサとしての性能評価に向けた測定を行っている。しかしながら、測定の簡便さ等を考慮し、量子ビットの測定方法として本提案手法ではなく、連続波を用いた測定手法を優先的に行っている。そのため、測定に関してはあまり進んでいない。一方で、理論に関しては、計画提案当初では磁気的結合、磁場ドライブのみを考慮し、量子ビットを二準位近似した量子Rabi Hamiltonianを使っていたが、電気的結合、電場ドライブ、回路Hamiltonianを用いた解析が可能なところまで研究が進展した。これは、計画提案当初には無かった方向性であり、Scientific Reportsに採択されたことからも大きな進展であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
コンデンサ短絡型を含む磁束量子ビットについて、交差共鳴法の原理検証を行うためのサンプルを設計・作製し、原理実証実験を進める。磁束量子ビット-共振回路間の結合強度について、いくつかの異なる値を持つサンプルを用いる。結合強度が比較的大きいサンプルについては、従来法である分散読み出し法を用いた量子ビット測定も行えるため、本提案手法との比較を行う。また、共振器の共鳴周波数を固定しつつ、量子ビットの周波数についても、いくつかの異なる値を持つサンプルを作製する。理論検討によると、共振器と磁束量子ビットの周波数が近い場合には磁束量子ビットのコヒーレンス特性が悪化することが予想されており、実験による実証を試みる。さらに、交差共鳴磁束バイアスの振幅が大きいほど測定時間が短くなることも理論的に予測されているが、一方で、振幅が大きいと測定エラーが増加することも考えられる。このような交差共鳴磁束バイアスの振幅に関するトレードオフについて実験的な検証を行う。以上のように、異なるパラメータを持つサンプルにおいて様々な条件下で測定時間、測定エラーを評価し、理論検討結果と比較するとともに、交差共鳴磁束バイアス法の最適化を目指す。
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