研究課題/領域番号 |
19H01837
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
伊藤 正行 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (90176363)
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研究分担者 |
小林 義明 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (60262846)
清水 康弘 名古屋大学, 理学研究科, 講師 (00415184)
松下 琢 名古屋大学, 理学研究科, 講師 (00283458)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 強相関電子系 / 多軌道電子系 / 励起子絶縁体 / 鉄系超伝導体 / チタンオキソニクタイド / ディラック電子系 / ビスマス合金 / 核磁気共鳴 |
研究実績の概要 |
本研究では、多軌道強相関電子系および関連する電子系に対して、電子間相互作用、スピン軌道相互作用、電子ホール相互作用などが重要な役割を果たす量子物性について、核磁気共鳴(NMR)法を主たる実験手段とした研究を進めている。本年度は、特に、以下の研究成果を得た。(1)励起子絶縁体候補物質Ta2NiSe5は、約3Gpaの臨界圧力で層間のスライディングを伴う構造相転移を示す。昨年度に引き続き、高圧NMR実験を進め、温度圧力相図の詳細を調べた。臨界圧力以下の精密なNMRスペクトル測定とともに、臨界圧力以上で正確なナイトシフトの決定を行った。これらの結果から、臨界圧力上下で励起子凝縮に伴うミクロな電子状態の変化を明らかにした。(2)鉄系超伝導体(La0.5-xNa0.5+x)Fe2As2は、FeAs層間のブロック層の組成を変えることによって、ホールから電子ドープまで広くキャリア制御が行える系である。本研究では、ホールドープ域の0<x<0.3の試料に対して、帯磁率、比熱、ホール係数、NMRの測定を行い相図を構築し、これまで不明瞭であった反強磁性相と超伝導相の相境界を決定した。(3)チタンオキソニクタイドBaTi2As2Oは、高温正方晶相から低温斜方晶相に転移することが知られている。単結晶試料を用いて一軸圧を印可したNMR測定の結果にもとづいて、斜方晶相の秩序状態として可能性がある電子構造モデルを提案した。(4)3次元ディラック電子系Bi1-xSbxの磁性を明らかにするために、NMRと帯磁率の測定を行った。半導体振る舞いを示す組成域で、ナイトシフトと帯磁率の測定からバンド間効果による反磁性軌道帯磁率を見出し、また、軌道励起で支配されると考えられる温度変化を示す核スピン格子緩和率を観測した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ニッケル化合物、鉄系超伝導体、チタンオキソニクタイド、ビスマス合金などの系に対して本年度当初に計画した研究はおおむね実施することができ、新奇物性の発現機構の理解が進んだ。また、これまでに得られた実験データの解析が終了した系に対しては、原著論文として発表した。上記以外のいくつかの系に対しても研究を実施することが出来た。このように、研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、核磁気共鳴法を主として用いた量子物質に関する研究計画に沿って、研究目標の達成を目指す予定である。注意すべき点としては、本年度で、研究代表者が定年退職を迎えたので、今後、研究代表者と研究分担者との連携に支障がでないように注意しながら、本研究課題の推進をはかる。
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