研究課題
本研究では、多軌道強相関電子系を持つ量子物質を主たる研究対象としてとりあげ、電子間相互作用、スピン軌道相互作用、電子ホール相互作用などが重要な役割を果たす量子物性の発現機構の解明を目指した研究を行った。また、多軌道強相関電子系のみならず、関連する量子物性を持つ物質も当初計画にとらわれず積極的にとりあげた。本年度は、主に次の研究成果を得た。(1)励起子絶縁体候補物質Ta2NiSe5のTa核の核四重極共鳴(NQR)実験を行った。NQR実験によって、励起子絶縁体の電荷自由度の物性について有益な情報を得ることが期待できる。常圧下で、Ta核の核スピン格子緩和率1/T1が、高温から転移温度に向かって発散的な振る舞いを示す結果を得た。この振る舞いは、Se核の1/T1が示すギャップ的振る舞いとは異なっており、格子ゆらぎに由来する電荷ゆらぎが転移点に向かって発散することを示していると考えられる。さらに、圧力下のTa核のNQR実験を行い、3GPaでの構造相転移に伴う異常を観測した。また、他の励起子絶縁体候補物質である1T-TiSe2の超音波吸収実験も進め、起子凝縮を示唆する結果を得た。(2)Z2量子スピン液体で発現するマヨロナフェルミオンは磁場中での異方的なスピン励起で特徴づけられる。α-RuCl3は、量子スピン液体を発現するキタエフモデルの有力候補物質として知られている。Cl核の1/T1の異方性測定から、スピン励起の異方性について調べた。その結果、磁場誘起スピン液体におけるトポロジカルエニオンの出現を支持する結果を得た。(3)ナノトンネル中に形成した一次元3He液体は、朝永ラッティンジャー液体的振る舞いが期待される。スピン拡散について有益な情報を得ることができる3He核のスティミュレイトエコーの観測に成功した。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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