本課題は非平衡領域にある強相関量子凝縮相において、レーザー誘起の量子相転移や実時間ダイナミクスなどに焦点をあてた研究を行うとともに、非平衡量子系に対する「強相関 非エルミート量子物性」という新しい視点からも研究を進めることを目的としている。2022年度に得られた主な成果についてまとめる。 (1)まず、一次元非エルミートXXZスピン鎖について、散逸下での普遍的性質を明らかにした。具体的には、ボゾン化法、厳密解、共形場理論を用いて相関関数とエネルギースペクトルを解析し、非エルミートXXZスピン鎖が複素に拡張したc=1共形場理論のクラスに属することを明らかにし、その正当性を密度行列繰り込み群による数値計算で確認した。(2)上記の解析をSU(N)内部対称性をもつ非エルミート量子多体系に拡張した。Haldaneにより提唱された「理想量子ガスによる記述法」を用いて、低エネルギー領域に現れる普遍的な性質を明らかにした。特に、相関関数の臨界指数に現れるスケーリング関係式を明らかにした。 (3)電子流体力学理論を用いて幾何学的な効果と表面プラズモンの協奏による新奇現象について詳しく解析した。具体的には、プラズモン共鳴と光回折ゲートによる近接場の効果によって、量子非線形ホール効果が広い周波数領域に渡って増強されることを明らかにした。また、ベリー曲率双極子由来の光電流と光吸収エネルギーとの間に普遍的な関係式を見出した。さらに、振動磁場によって誘起される付加的な駆動力を考慮することによって、新しい光電流の発生メカニズムを提案した。
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