研究課題
基盤研究(B)
スピンと軌道角運動量が強く結合した遍歴電子が結晶中の磁性イオンと結合することにより特異な電子輸送現象や磁性をもたらす新規トポロジカル電子状態の探索をおこなった。層状化合物Eu3F4Bi2S4においては、従来型の弱局在効果では説明できない特異な電気抵抗のベキ的温度依存性や、Eu磁気モーメントと結合した巨大な負の磁気抵抗を見出した。また、カイラル結晶構造や多層殻状クラスタを結晶構造に持つ電子伝導系へと物性探索の対象を拡げ、結晶対称性を反映した幾つかの新規トポロジカル物性を見出すことに成功した。
電子物性
本研究で実施した物性探索により、スピン軌道強結合電子が関与する多彩なトポロジカル電子状態を新たに見出すことができた。特に、層状化合物Eu3F4Bi2S4で観測された特異な伝導現象は、非従来型の局在効果の存在を示唆している。この現象は、基礎科学として重要であるのみならず、磁性イオンが持つ磁気モーメントの向きに敏感であり、巨大磁気抵抗効果として電子伝導を制御することができることから、新規スピントロニクス素子や、次世代量子情報処理の基盤技術につながる可能性がある。