研究課題/領域番号 |
19H01842
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
池田 浩章 立命館大学, 理工学部, 教授 (90311737)
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研究分担者 |
鈴木 通人 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (10596547)
星野 晋太郎 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (90748394)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 物性理論 / 第一原理計算 / 重い電子系 / 超伝導 |
研究実績の概要 |
密度汎関数理論(DFT)に基づく第一原理バンド計算は様々な結晶の電子状態の解析に広く利用されているが、実際の計算で導入される局所密度近似は遷移金属など磁性元素を含む結晶の電子状態をうまく記述できず、電子相関の問題として広く認識されている。これまでの研究から、この問題は動的平均場理論(DMFT)によってある程度うまく処理されることが明らかとなり、海外を中心にDFT+DMFTのコード開発が進んでいる。我々のグループでもそのオリジナルコードの開発を手がけ,磁性材料に重要なスピン軌道相互作用を取り入れた形で,電荷密度の自己無撞着計算が行える所までコード開発を行ってきた。 本年度はベンチマークテストを兼ねて,このコードがいくつかの典型的重い電子化合物の特徴を再現するかについて試験した。主として,CeRu2Si2とCeCu2Si2の2つについてその電子状態の計算を行った。CeRu2Si2は低温までフェルミ液体状態の典型的重い電子系化合物であり,基底状態としてはj=5/2,jz=±5/2が主成分となる異方的な電子状態を持つことが知られている。CeCu2Si2は強相関電子系で初めて発見された異方的超伝導体と考えられているが,最近の研究から疑義が生じている物質であり,正しい電子状態の知識が必要とされている。 ただ,現状得られた結果では,電荷分布を自己無撞着に決め直さなければかなり異方的であるのに反して,自己無撞着に決め直すと共に顕著な異方性が見られない状態に収束している。これは実験結果に矛盾する結果である。現在も様々な角度から検証を行っているが,一つ考えられている問題は1不純物問題にマッピングする際の局所ハミルトニアンの構築の仕方にあることが徐々に分かってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計算コードは組み上がっているので,様々な物質に適用して行く予定であったが,電荷分布を自己無撞着に計算すると期待したような異方性が消失してしまうという新たな問題に直面したため。問題点として考えられる局所ハミルトニアンの構成の仕方については,概ね検討はついているため,現在,この点の改良に注力しているところである。
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今後の研究の推進方策 |
まずは,電荷分布を自己無撞着に決め直すと異方性が消失してしまうという問題を解決すべく,1不純物問題にマッピングする際の局所ハミルトニアンの構築の仕方を2つの方法で改良する。一つは海外で広く行われているように,スピン軌道相互作用を考慮せずにLDA+DMFTの計算を行い,最後にスピン軌道相互作用を考慮するという方法,もう一つはクーロン相互作用の数えすぎを差し引くためのdouble counting termに軌道依存性を取り込んで,差し引くべき項を改良する方法である。 また,これとは別にスピンゆらぎが強い場合への補正としてLDA+FLEXのコード開発を行う予定である。
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