研究課題
本年度はJ-PARC物質生命科学実験施設 BL06(VIN ROSE)に実際に電磁石を導入し、磁場中のテスト実験を行なった。試料は磁気スキルミオン物質であるCo-Zn-Mn合金の単結晶を理研創発物性科学研究センターの軽部氏から提供いただいた。この系はカイラルな結晶構造と強磁性的な相互作用から長周期のらせん磁気構造を示し、Mn含有量によって磁気転移温度や磁気周期も変化する系である。本実験では磁気転移温度直下の弱磁場中で生じた磁気スキルミオン三角格子状態と、低温磁場中で見られる乱れた磁気スキルミオン状態においてVIN ROSEビームラインを用いた中性子スピンエコー分光測定を行い、ナノ秒オーダーの磁気ゆらぎを観測することを試みた。データは現在解析中であるが、電磁石を用いた磁場中においてもスピンエコーシグナルが得られることが実験的に確認でき、今後磁性体のスローダイナミクス測定に活用していける見通しがついた。また、本課題においては偏極中性子を活用して磁気スキルミオン等のトポロジカル磁気秩序を研究することが柱の一つであり、これに向けて昨年度の後半からJ-PARC MLF BL15(TAIKAN)において散乱中性子のスピン偏極解析装置を構築した。東大工学部の関研究室高木氏との共同研究で、空間反転対称性を持った磁気スキルミオン物質EuAl4に偏極中性子小角散乱を適用し、その磁気構造の磁場変化を明らかにすることに成功した。さらに、本年度からは研究用原子炉JRR-3が約10年ぶりに再稼働し、定常中性子を活用した研究も可能となった。申請者らはJRR-3に設置された偏極中性子3軸分光器の担当者であり、これを用いてEuAl4のゼロ磁場における磁気相転移を詳細に探査した。これらの結果を相補的に組み合わせ学術論文として発表した。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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Nature Communications
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Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section A: Accelerators, Spectrometers, Detectors and Associated Equipment
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