構造変化を伴う人工分子モーターの実現に向けて実験と数値計算による研究を進めた.R3年度までに示唆されていた,燃料結合による構造変化を定量的に評価することができた.構造変化を複数有して一方向に動く人工モーターの実現に向け,モーター構造の設計,分子動力学による構造の検証,ばね-ビーズモデルによる数値計算を用いた動作確認を行った.同時に,レールとなるDNAナノチューブを実現し,最適なレール構造の検証を進めた. 構造変化を伴う人工分子モーターに関しては,R3年度までは,実験を中心に研究を進めてきた.構造変化という中心的な技術の開発にある程度見通しがついたので,数値計算によってモーターの動作検証を行い,物理パラメータの評価を始めた.全体を原子レベルで分子動力学によってシミュレーションすることはシステムサイズから見て現実的ではなく,モーターをばねでつながった粒子の集合と見なす粗視化モデルを用いて検証を進めた.これにより,一方向に動作するための条件を検討し始めた. R4年度で研究期間が終了するが,人工分子モーターを実現するという当初の最終目標には達することがまだ出来ていない.しかし,これまでの研究を引き続き実行し,構造変化を伴う人工分子モーターの実現を目指す.また,R3年度までに進めていたラチェット型人工モーターの数値モデルに関しては,パラメータのさらなる検証が必要なことが分かり,パラーメータを変えて数値計算をやり直し,論文としてまとめている段階である.近日中に投稿予定である.
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