研究課題
流体界面が、ちぎれたり、合一したりして、界面形状に特異な形状が現れる特異動力学現象は、相転移における臨界現象との類似性もあり、多くの物理学者や応用数学者の注目を集めてきているが、その数理にはまだ未解明な点が多い。本代表者は最近、擬二次元系での研究を実験・理論の両面から展開し数々の成果を上げてきた。本研究では、これらの研究を受け、次元性・対称性に着目し、擬二次元などの閉じ込められた空間において、流体界面や滴やバブルの動力学に関する研究を進める。実験と理論を行き来しつつスケーリング則を確立することで物理現象の普遍性を解明することに力点を置き、同様の手法で種々の物理現象も幅広く研究する。本年度は、以下の進展があった。(1)固体ディスクによる粘性液体への空気の引き込み現象における普遍性: 擬二次元のセルに粘性液体を入れた容器に固体ディスクを落下させるときに生じる空気の液体への引き込み現象に伴う、気体の引きちぎれ(分離)の問題に関する研究を進めた。引きちぎれる気体がシート状の場合とコーン状の場合があり、本年度は、シート状の場合について、分離前の動力学を第一原理的な式から定式化し、成果を物理学会などで発表した。(2)擬二次元の液中液滴の融合の動力学における普遍性の探求: 擬二次元のセルに水と油などの交じり合わない2つの液体を入れて、二層分離状態を作り、その中で、どちらかの液体の滴がその液体の層と融合する現象の動力学について、融合の初期に着目して、条件を変えて実験を進め、成果を物理学会などで発表した。(3)擬二次元のセル中でのバブルの破裂・生成・上昇の動力学に関する研究も進め、成果を物理学会で発表し、バブルの上昇については国際学術誌に論文を発表した。この他、毛管上昇の基礎的な問題についても研究の進展があった。啓蒙書の出版や高校生対象の授業などのアウトリーチ活動も積極的に行った。
2: おおむね順調に進展している
物理学会等で19件の成果を発表(うち2件が国際会議)し、国際学術誌の論文の発表が1件あった。啓蒙書の出版も行った。
新型コロナウィルスの流行による種々の活動の自粛要請があり、実験の研究を進めることに制約を受けはじめている。実験データ解析手法についての検討も進めるなどして、実験を今まで以上に効率的に進めていく。理論研究に加えて、数値解析による研究の展開も検討する。
3つのアウトリーチ講演を行った。(1) オープンキャンパスセミナー, 奥村剛, 身近に潜む物理学最前線, お茶の水女子大学 2019.7.13. (2) 模擬授業(戸山高校), 奥村剛, 印象派物理学で迫る、最前線にある日常的な物理, お茶の水女子大学, 2019.10.4, (3) 模擬授業(魚津高校), 奥村剛, 印象派物理学で迫る、最前線にある日常的な物理, 魚津高校、2019.10.4
すべて 2020 2019 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件) 備考 (1件)
Physical Review Research
巻: 2 ページ: 013188 1-12
https://doi.org/10.1103/PhysRevResearch.2.013188
http://www-p.sci.ocha.ac.jp/okumura-phys/