研究課題/領域番号 |
19H01866
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田辺 博士 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 助教 (30726013)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | プラズマ科学 / 核融合 / 磁気リコネクション / プラズマ診断 |
研究実績の概要 |
研究初年度は、計測対象のプラズマの電子温度・密度のパラメータレンジを把握するため、静電プローブ方式による電子温度・密度のパラメータレンジ把握から実験を開始した。修士課程2年の大学院生実験と連携して静電プローブ計測を行い、2019年度段階のパラメータでは電子温度Te<30eV程度、電子密度ne~1×10^20/m^3程度であることを確認した。一方で、プラズマ合体の上流側・X点・下流でパラメータが1桁近く変化する特性があったため、広域二次元計測を実施、合体下流のアウトフロー領域における電子密度の上昇およびX点近傍の電子温度上昇を検出したが、一方で、合体下流のイオン温度との衝突過程を介したエネルギー緩和を示唆するホローな電子温度分布が合体下流で検出され、従来注目してきたX点近傍の詳細な測定だけでなく、合体下流も網羅した広域測定も必要となることが確認された 並行して、トムソン散乱方式による電子温度・密度計測基盤整備の準備も開始した。小野靖教授の基盤S研究15H05750で進行しているフィルター分光方式による二次元YAGトムソン散乱計測は、電子温度・密度の桁が大きく変化する実験への対応に難航しているため、本計画ではより広範囲の電子温度レンジにロバストに対応可能なRubyレーザを用いたTVトムソン散乱計測導入可能性の調査を実施。東京大学柏キャンパスに所蔵されている故障中の10J出力Rubyレーザについて、BMI社倒産後の保守管理担当が日本レーザ社からタレスジャパン社に移行していたため、同レーザ復旧可能性調査を並行して実施した。2019年度末(2020年)からのコロナウイルス万円の影響で、フランスのタレス本社からの協力を要する同調査は2019年度中に完了しなかったが、同社の保守対応合意により同レーザ復旧の見込みが立ったため、並行して同TVトムソン散乱に用いる画像検出器の調達を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度として予備調査年度として位置付けた2019年度の科学目標については順調に進行し、国際誌論文成果・招待講演を含む学会発表成果など順調ではあるが、機器の保守管理・調達業務については年度末のコロナウイルスまん延の影響を受けたため、「(3)やや遅れている」と評価する。 静電プローブによる予備実験は順調に進行したが、研究室所蔵の故障中のRubyレーザ復旧による、Rubyレーザを用いたTVトムソン散乱計測を導入する可能性判断の面では遅れが見られた。BMI社により開発された同Rubyレーザの国内保守管理は従来日本レーザ社が担当していたが、BMI社倒産・タレス社買収以後、日本レーザ社の保守管理撤退のため、同Rubyレーザ故障状況のタレスジャパン社への引き継ぎから復旧業務は開始した。日本レーザ社保守時代、インターロック誤動作により保守中止履歴の経過があったものの、タレスジャパン社引き継ぎ後インターロック解除に成功したため、同社に復旧再開を依頼して順次修理・復旧を推進。日本レーザ社が保守撤退の原因となった最大の問題を解決し、復旧が順調に進む見込みを得たためRubyレーザによるTVトムソン散乱計測の基盤整備も推進を判断、復旧予算投入を確定した。同レーザ復旧の過程を通じて、その他経年劣化による水漏れおよびそれによるフラッシュランプ短絡放電などの問題が発生したため、各種パッキンの交換及び破損しているフラッシュランプ交換に伴い、仏国のタレス社本社の協力が必要となった。しかしながら、2020年に入りコロナウイルスまん延に伴う各々組織の自宅待機の状況により業務が遅延、一部調達業務に遅延が生じ、年次内の業務完了が難しくなり年次繰り越しを必要としたことから「(3)やや遅れている」と評価する。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度内では完結できなかった、Rubyレーザ復旧の完了および、本研究で利用する本郷キャンパスの実験に同Rubyレーザを投入できるようにするため、復旧の見込みがたったところで柏キャンパスから本郷キャンパスへの同レーザの移動・再調整が必要である。2019年度に引き続き、2020年度はフラッシュランプ交換、レーザの各増幅器入射系統のアライメント再調整、プロファイルモニタ等を実施し、大まかな復旧めどがたったところで本郷キャンパスへ同装置を移動、再調整を行い同レーザの復旧を完了する。 一方で、静電プローブによる電子温度・密度計測では、ダブルプローブと浮遊電位端子方式によるトリプルプローブ測定において、プローブに与えるバイアス電圧によって測定した電子温度が大きく変化する傾向がみられ、このままの状態で電子・イオンエネルギー分岐比等の考察を進めることにリスクが感じられたため、静電プローブ方式についてはダブルプローブに与える印加電圧を変える基礎実験を実施、最終的な実験成果の信頼性をあげるための基盤整備を引き続き実施、YAG・Rubyトムソン散乱計測の整備も並行し、双方によるクロスチェックを行える実験環境を整備する。
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