研究課題/領域番号 |
19H01869
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
岡本 敦 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (50396793)
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研究分担者 |
高橋 宏幸 東北大学, 工学研究科, 助教 (30768982)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 境界層プラズマ / 体積再結合過程 / 衝突輻射モデル / ダイバータプラズマ / 電子エネルギー分布 / 非等方エネルギー分布 / レーザートムソン散乱 |
研究実績の概要 |
本研究の目的である体積再結合過程に対する電子エネルギー分布の影響解明のために、以下の項目を実施した。 ・電子エネルギー分布の時間発展を原理的に取得可能な条件付き抽出法を静電プローブ解析に新たに導入した。浮遊電位に観測される間歇的な負側への変動(スパイク)を条件とすることで、スパイクが発生しているマイクロ秒程度の時間において電子温度が上昇していることを明らかにした。エネルギー分布の直接計測に有効なレーザートムソン散乱について、想定される入射光子数および散乱光子数の見積もりを行い、入射光学系と集光光学系を設計製作した。 ・体積再結合過程が支配的となる実験での中性ガス圧力の分布を詳細に把握するために、分子流から粘性流までの広範囲の圧力条件で、装置内の中性ガス圧力分布を推定する計算コードを開発するとともに、適切な圧力計を整備し高ガス圧力下の実験を開始した。さらに、プラズマ生成・加熱に用いるマイクロ波入射システムの入射モードを調整するための制御機器を製作し、加熱の高効率化による高密度プラズマ生成実験を開始した。 ・非等方なエネルギー分布が、励起・電離などの反応速度係数を通じて衝突輻射モデルに及ぼす影響の定量評価を開始した。最初のステップとして陽子衝突について非等方性を考慮した衝突輻射モデルを構築し、磁気ミラー閉じ込めプラズマ中の計測や数値解析に及ぼす影響を明らかにした。モデルの実験検証に温度と共に必要となる流体的な平均速度について、マッハプローブを用いたイオン流速計測の導入と径方向電場による流速制御の実験を開始した。 ・分光計測の多視線化による視線奥行き方向の分布情報推定の高精度化のため、多視線計測を可能にする受動分光計測システムを考案し基礎データを取得した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
詳細な実施項目ごとに進捗状況は異なるが、研究全体を総括すると概ね順調に進展しているといえる。 衝突輻射モデルの逆問題として高精度にパラメータを推定する手法の開発では、計算機環境の移行に伴う停滞が生じたが、回復しつつある。並行して実施した、多視線計測を可能にする受動分光計測システムの検討が順調であり、実験実証に向けては着実に進展している。 新たな計測手法の導入など実施項目の多様化がみられたが、4件の国際会議口頭発表を含む多くの研究成果発表が行えている。
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今後の研究の推進方策 |
大幅に研究計画を変更することはなく、順調に進展している研究項目は当初の計画通りに推進し、遅れがみられる研究項目はより効率的に推進していく。 これまで一部手動で対応していた実験シーケンスが自動化され、条件を系統的に走査して実験データを蓄積する実験の効率向上が期待できる。 実験からモデル構築まで、これまで得られた多様な研究成果を総括することで、体積再結合過程に対する電子エネルギー分布の影響解明に取り組む。
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