研究課題/領域番号 |
19H01873
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
近田 拓未 静岡大学, 理学部, 講師 (20614366)
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研究分担者 |
八木 重郎 京都大学, エネルギー理工学研究所, 講師 (70629021)
田中 照也 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (30353444)
向井 啓祐 京都大学, エネルギー理工学研究所, 助教 (70807700)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 被覆 / トリチウム / 透過 / 腐食 / 照射 |
研究実績の概要 |
本研究は、核融合炉ブランケットの諸課題の解決に有望な機能性被覆について、実機環境で想定される水素・腐食・照射による相乗効果の解明と、実用に耐えうる被覆の設計を通して、核融合炉ブランケット材料開発に貢献することを目的としている。 初年度の成果は、主に水素、腐食、照射の各要素におけるものと、二つの要素を組み合わせたものに大別される。各要素における成果として、固体および液体ブランケット環境における腐食挙動を明らかにした。リチウムとの反応や腐食生成物による多層被覆の層間剥離などから、層構造の最適化が進展した。照射挙動においては、重イオン照射による損傷の導入とヘリウム注入における核変換およびトリチウムの壊変で生成するヘリウムの効果を明らかにした。被覆に生成したヘリウムバブルが被覆の粒成長や結晶化を阻害することが示されたのは、水素透過挙動の理解において重要な成果である。二現象の組み合わせによる成果では、リチウム鉛曝露環境下水素同位体透過試験の体系を構築し、腐食挙動を水素透過で検知することが可能になった。実際に、試験中に膜質の変化と見られる透過挙動変化の観測に成功した。また、照射と腐食の相乗効果として、重イオン照射した被覆試料を液体リチウム曝露試験に供し、照射領域と非照射領域の腐食挙動の違いを明らかにした。さらに、水素と照射の相乗効果として、被覆中に導入した重水素がガンマ線照射によって減少することが明らかになった。この成果はこれまで考慮されてこなかった現象を明らかにしたものであり、核融合炉内のトリチウムインベントリーの評価にきわめて重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
水素・腐食・照射の相乗効果の解明に向けて、初年度では各要素の理解を進め、二要素の相乗効果の検討まで進展した。2020年度には三要素の相乗効果の解明に着手できる見込みである点では当初の計画以上の進展といえるが、流動環境下腐食挙動と中性子照射効果については実験に向けて進行中であり、翌年度に成果が出る予定である。 実機環境に耐えうる機能性被覆の開発については、セラミックス多層被覆とセラミックス-金属接合被覆に焦点を当て作製と特性評価を進め、腐食試験、イオン照射試験、水素透過試験を通して、水素透過を低減しつつ照射と腐食に耐えうる材料の組み合わせと層構造を最適化しつつある。 以上の進捗状況から、おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度では、機能性被覆の水素透過および滞留、増殖材による腐食、並びに照射挙動の理解を統合し、本研究課題の中枢部である三現象の相乗効果を明らかにする。具体的には、重イオン照射試料の腐食環境下水素透過試験の実施および結果の解析を2020年度の最終目標として、個別および二現象の相乗効果に関する知見を整理し、必要に応じて追加の実験を実施する。 実機環境に耐えうる機能性被覆の開発においては、より高温、長時間の腐食試験や照射試料の腐食環境下水素透過試験を通して、最適化した被覆の実機適用に向けた特性評価を進める。最終年度での性能評価に向けて、照射効果を考慮した層構造の改良を進める。
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