研究課題
令和元年度においては、周辺プラズマ領域における揺動計測のための計測システムの設計、製作および設置を行った。新たに製作した計測系では、プラズマからの光をヘリウムと水素の4つの発光スペクトルに分岐させることができ、これを高速カメラで最大100kHzサンプリングで収集できる。令和元年度のLHD実験で初期的なデータを取得することができた。これによってシステムの動作確認が完了したとともに、得られた実験データからノイズレベルと空間分解能を確認し、ほぼ設計値通りの性能であることを確認した。これらのデータに基づき、次年度以降の実験に向けてシステムの最適化を行う。また、ダイバータ熱負荷計測用の赤外線カメラシステムの整備を進めた。LHD実験においては、摂動磁場を印加して周辺部の磁場構造を3次元的に変化させた場合に、閉じ込め性能の改善が起こることが観測された。この現象は重水素を燃料としたプラズマで起こり、かつ周辺部の放射損失が増大し、周辺部の温度が低下するときに発現することが確認された。この時、ダイバータの熱負荷は軽減されているが、摂動磁場の空間構造に起因した変調がダイバータ熱負荷にもみられることがデータ解析から分かった。次年度ではこの運転モードに対して、補助的な不純物入射を行い、さらなるダイバータ熱負荷の軽減を試みるととに、コアのプラズマ閉じ込め性能への影響を調べる予定である。プラズマの放射損失と磁場構造との関係を調べるために新たに周辺プラズマ輸送コードの開発を行った。この計算コードを用いたシミュレーションの結果、プラズマの発光は摂動磁場によって形成される磁場構造のうち、X点とよばれる領域で特に促進されることが示された。LHDの実験において、摂動磁場の空間的な位相を変化させた実験を行った結果、シミュレーションと同様の振る舞いをすることが確認された。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定どおり、計測系の設計、製作、設置を完了することができた。また、実験においてダイバータ熱負荷軽減とコアプラズマ性能の両立に期待ができる新たな現象が発見された。
令和2年度では、これまでに立ち上げた周辺部の揺動計測系の最適化を行う。また画像データ解析用、および衝突輻射モデル用のプログラムの作成を進める。新たに実験で観測されたコアのプラズマ閉じ込め改善モードの発生条件を調べる。摂動磁場によるデタッチメントの安定性の解析を、新たに開発したシミュレーションコードを用いて進める。LHD実験では、補助的な不純物入射実験を行い、更なるダイバータ熱負荷軽減を試みるとともに、コアプラズマ性能への影響を調べる。
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Nuclear Fusion
巻: 59 ページ: 096009~096009
10.1088/1741-4326/ab26e6