研究課題
本研究では、将来の核燃焼炉心内部のような低衝突プラズマにおいてその特性に大きな影響を及ぼすことが予想されている微視的乱流の観測システムを確立するため、(1)3Dプリンターを用いた立体造形によって複雑な三次元構造のアレイアンテナを精密かつ安価に製作し、(2)機械駆動機構が無く高速かつ堅牢に様々な角度にミリ波ビームをスキャンすることのできる周波数走査型のレーダー散乱計測システムを構築し、(3)高温プラズマ実験装置に適用してプラズマの微視的乱流の計測を行い、予測理論研究との比較を行うことにより、新しい乱流物理の知見を得ることを目的としている。本年度は、フェーズドアレイアンテナを、2種類(銅とアルミ)の金属パウダーをレーザで溶融しながら積層して造形する、3Dプリンターによって、製造しその性能を調べた。これらのアンテナは、原理実証のためのプラズマ実験に適用することを想定し、それぞれ、周波数15GHz近傍のKu-band、および40GHz近傍のQ-band帯で広帯域に使えるよう、3次元CADを用いて設計した。製造したアンテナの放射パターンをネットワークアナライザを用いて測定し、いずれのアンテナも、アンテナを動かすことなく、±30度を超える領域に電磁波を放射できることを確認した。また、造形方法の違い、造形時の表面処理の違いなど3Dプリンタを用いた造形方法の特徴を理解した。そして、これらのアンテナをドップラーレーダーのアンテナとして使用できることをテストベンチで確認した後、九州大学の直線型プラズマ実験装置PANTAにてプラズマ実験に適用した。その結果、プラズマ中の揺らぎによって生じた散乱信号を観測することに成功した。これにより、本アンテナを用いた乱流計測の原理実証に成功した。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画で予定していた、3年目までに実施することを目指していた、金属3Dプリンタを用いたフェーズドアレイアンテナの試作、性能調査、プラズマを用いた原理実証試験などを実施できているので。
本研究では、ミリ波ビームの放射角度を電子式にスキャンする手法として、周波数走査式のフェーズドアレイアンテナの適用を図っており、このためには、アレイ状に並べたアンテナ間を導波路で接続するという立体構造のアンテナアレイの製作がキーとなる。2022年度は、3次元プリンタによって造形したアンテナの性能向上を図ること、このアンテナを用いてプラズマ乱流の観測を行うこと、多周波数発振光源とこのアンテナとを統合運用できること、を示して本研究をまとめ、将来の核融合研究に資することを目指す。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 4件、 招待講演 2件)
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