研究課題/領域番号 |
19H01881
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
田村 直樹 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (80390631)
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研究分担者 |
吉沼 幹朗 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (20323058)
鈴木 千尋 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (30321615)
舟場 久芳 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (40300727)
向井 清史 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (90632266)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | プラズマ・核融合 / 炉心プラズマ / 不純物輸送 / 不純物蓄積 / トレーサー内蔵ペレット / TESPEL |
研究実績の概要 |
本研究課題では、不純物蓄積回避の度合いが、プラズマパラメータを変化させることでどの程度影響を受けるかを系統的に調べる。この作業を通して、不純物回避スキームにおいて鍵となる物理パラメータを実験的に明らかにする。また、シミュレーションとの比較、検証を繰り返し行い、確実性の高い物理モデルを構築する。最終目的として、不純物蓄積回避スキームを支える物理機構の解明を目指す。 2020年度は、2019年度に実施した予備実験の結果を基に、開発を進めた結果、本研究課題の一里塚であった、1個のポリスチレン球殻ペレットの中にCXS計測に十分な量の低Z不純物とEUV/VUV計測に十分な量の中/高Z不純物を含む複合トレーサー内蔵ペレットの開発に成功した。同複合トレーサー内蔵ペレットを用いて、LHDプラズマ中に、1) チタン酸リチウム(Li2TiO3)、2)六ホウ化ケイ素(SiB6)、3)アルミン酸カルシウム(CaAl2O4)、4)塩化ナトリウム(NaCl)、5)窒化マグネシウム(Mg3N2)を入射したところ、いずれの化合物も問題なくプラズマ中に局所供給することに成功した。この実験の結果、電子密度に対する不純物輸送のZ依存性に関する明確な実験データの取得に成功した。また、以上の化合物不純物に対して、電子サイクロトロン共鳴加熱(ECRH)を用いた不純物蓄積回避スキームのロバスト性評価実験を開始することもできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2020年度では、本研究の目標の1つであった、1個のポリスチレン球殻ペレットの中にCXS計測に十分な量の低Z不純物とEUV/VUV計測に十分な量の中/高Z不純物を含む複合トレーサー内蔵ペレットを開発することに成功した。 2019年度の予備実験の結果を踏まえて、リチウム(Z=3)とチタン(Z=22)の間の不純物を効果的かつ効率的にLHDプラズマに入射するために適切な化合物を検討した結果、1) チタン酸リチウム(Li2TiO3)、2)六ホウ化ケイ素(SiB6)、3)アルミン酸カルシウム(CaAl2O4)、4)塩化ナトリウム(NaCl)、5)窒化マグネシウム(Mg3N2)を選定した。2020年度に実施されたLHD実験において、これらの化合物不純物を複合トレーサー内蔵ペレットによりLHDプラズマ中に入射した。LHDプラズマの電子密度が低い(2x10^19 m^-3)場合、入射された不純物からの発光強度の減衰時間にあまり大きな違いは見られなかった。一方、LHDプラズマの電子密度を高く(4x10^19 m^-3)すると、不純物のZが大きくなるとともに、不純物からの発光強度の減衰時間が長くなり、不純物輸送のZ依存性に関する明確な実験データを取得することに成功した。高密度時には、不純物蓄積スキームとして、これまでの知見に基づき、適切なタイミングで電子サイクロトロン共鳴加熱(ECRH)を印加した実験も行っており、不純物蓄積回避スキームのロバスト性評価実験を開始することもできた(現在、実験データの解析を進めているところである)。 複合トレーサー内蔵ペレットの開発が当初の計画より早く終了したことや、同ペレットを用いた不純物蓄積回避スキームのロバスト性評価実験を開始することもできたことを踏まえ、本研究課題は、当初の計画以上に進展している、と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度の結果に基づき、2021年度は、次の2つの研究・開発に注力する。1) 軽Z不純物密度分布を計測するための荷電交換計測の改良、2) 不純物蓄積回避スキームのロバスト性の検証。1)においては、さらに精度良く、また効率的にLHDプラズマ中における低Z不純物の時空間発展を測定するために、CXS計測システムの最適化及び拡充を進める。2)においては、不純物蓄積回避スキームのロバスト性評価実験をイオンサイクロトロン共鳴加熱(ICRH)も用いて、本格化させる。1次元不純物輸送コードSTRAHLを用いて、得られた実験データを再現できる不純物輸送係数分布を求める。求めた不純物輸送係数分布を、新古典輸送理論コードDKES/PENTA及びジャイロ運動論コードGKVによって得られた計算結果と比較して、妥当性の高い輸送モデルの構築を進める。また、あわせて、国内外で開催されるワークショップや学会に参加して、本研究の進捗状況及び成果のまとめについて報告し、外的評価を受ける。それと同時に、本研究で得られた成果をまとめて、コミュニティにおいて認知度の高い学術論文誌に投稿する。
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