研究課題/領域番号 |
19H01883
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
中野 治久 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (90442524)
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研究分担者 |
笹尾 真実子 同志社大学, 研究開発推進機構, 研究員 (00144171)
木崎 雅志 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (70598945) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Csフリー水素負イオン源 |
研究実績の概要 |
理想的な条件では、アルカリ金属並みの2.4 eVという低仕事関数を持つC12A7エレクトライド表面について、水素負イオン源で想定される軽水素および重水素放電によりどのように仕事関数が変化するか調査した。さらに、放電容器とC12A7エレクトライドにバイアス電圧を印加することによりどのように仕事関数が変化するかについても調査した。この結果、軽水素放電関連過程では2.6 eVと理想的な条件下に近い値と得ることができた。C12A7エレクトライド表面の仕事関数と水素負イオン生成量の関係を調べたところ、軽水素および重水素ともに低仕事関数ほど水素負イオン生成量が増加する傾向がみられたが、当初予想していた指数関数的な関係はみられなかった。C12A7エレクトライドにバイアス電圧を印加して軽水素および重水素負イオン生成量を調べることにより、同条件でみられた水素負イオン生成量の同位体効果は水素正イオンがC12A7エレクトライドへ入射する速度により説明可能であることが分かった。 放電電力50Wの小型ECR水素負イオン源において、負イオン源プラズマとビーム引出境界であり、水素負イオン生成面でもあるC12A7エレクトライド製プラズマ電極にテーパー加工を施した。テーパー面を上流にした場合、テーパー面を下流にした場合と比べて4倍以上のビーム電流を得た。参照材料であり水素負イオン生成効果が殆どないモリブデンでも同様の実験を行ったがC12A7エレクトライドほどの差はみられなかった。このことからテーパー加工によりビーム引出孔近傍の水素負イオン生成面が広くなったことが水素負イオンビーム電流の増加に繋がったと示唆された。 kW級放電電力のプラズマ源を製作し、次年度以降のkW級放電化におけるC12A7エレクトライドの性能評価に向けた整備を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
C12A7エレクトライドの水素負イオン生成に関する基礎研究として、C12A7エレクトライド表面の仕事関数に関して、昨年度の仕事関数低下法の研究に引き続き、水素プラズマ曝露化における仕事関数の変化、同条件下における低仕事関数にするための条件探索の調査が当初計画通り進捗した。また、当初予想していなかったC12A7エレクトライドにおける水素負イオン生成量に関する同位体効果が出現したが、これを説明する可能性を示した。 小型ECR水素負イオン源において、C12A7エレクトライド製プラズマ電極のビーム引出孔形状と水素負イオンビーム電流の関係の調査について、当初計画通りに進めた。 次年度以降のkW級放電電力によるC12A7エレクトライドの水素負イオン源としての性能調査のための装置の準備を進めた。 以上より、本研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
C12A7エレクトライドの水素負イオン生成に関する基礎研究として、これまでの研究をベースとして、仕事関数、水素負イオン生成量、水素負イオン生成機構に関する統合的理解をさらに進める。 小型ECR水素負イオン源において、イオン源運転パラメータ(ガス圧、バイアス電圧、引出電圧、加速電圧など)を変化させ、イオン源プラズマパラメータと水素負イオンビーム特性の物理的関係性の理解を更に推し進め、C12A7エレクトライドがどのようなイオン源プラズマパラメータでプラズマ電極として最も有効に機能するか、また、その理由について明らかにする。 kW級誘導結合放電を用いた水素負イオン源において、プラズマ電極としてC12A7エレクトライドを用いて、イオン源プラズマパラメータおよび水素負イオンビーム特性を調べる。プラズマ電極として参照となる金属(アルミニウムなど)でも実験を行い、C12A7エレクトライドを用いた場合の比較を行う。この水素負イオン源と数10W級の小型負イオン源では電離度および水素分子の解離度が大きく異なると考えられるため、両イオン源での比較を行い、放電方法や装置サイズ、電離度、解離度などとC12A7エレクトライドを用いた負イオン源性能の関係を明らかにする。
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