研究課題/領域番号 |
19H01886
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
占部 継一郎 京都大学, 工学研究科, 助教 (80725250)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | プラズマ / イオン / レーザー分光 / 時空間速度分布 |
研究実績の概要 |
本研究はレーザー誘起蛍光(Laser-induced fluorescence spectroscopy: LIF)法によるイオン流れ計測を連続出力可能な技術に進化させ,最先端プラズマ産業技術の発展に寄与できることを実証することを目的とした研究である.研究代表者独自のアイデアに基づく新たな分光計測実験系の組立・試験を通じてプラズマ計測の高度基盤技術を開発することを目的とした研究活動を行った.2020年度に行った(a)テーパードアンプによる励起レーザー光の高強度化と(b)低気圧環境下(<1Pa)で動作する高密度ECR(Electron Spin Resonance)型プラズマ源の導入により,プラズマ材料プロセスを模擬した放電・計測形式において高速計測・空間分解計測への進展に十分なLIF信号強度が得られたため,本実験系を用いた計測研究を継続した. 2021年度は,プラズマチャンバー内に励起レーザー光軸方向にイオンを引き込むイオン流れ制御実験系を作製し,交流バイアス電圧と直流バイアス電圧によるイオン引き込み+放出を行った状態でのLIF実験を行い,プリシース形成によるイオン流れ変化を検出した.また,上記と並行して「イオン流れの高速時間分解計測」実現に向けた実験系構築を行った.これは,近年のプラズマ計測技術全般に求められるテーマであり,本研究が行うLIF計測においてもこの潮流に沿った研究開発を進めることが肝要である.励起レーザー光を光チョッパにより低周波変調するパルスプラズマ模擬実験により,構築したLIF計測系がミリ秒未満の時間分解能を有することを実証した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記載した通り,当初計画に沿ってLIF計測実験を安定して遂行し研究が順調に推移している.また,イオン流れ計測の高速化に向けた分光実験系の要素開発を行い,連続発振レーザーを用いたLIF法では従来報告されていないミリ秒未満の時間分解能を有する蛍光信号検出を実証した.以上の理由から,本年度も上記区分の進捗状況評価とした. 新型コロナウィルス感染症拡大により,2021年度も購入機器の納期遅延など様々な問題が発生しているが,実験計画を調整しながら研究全体の遅延を最小限に抑えている.今後も成果発表や情報交換に支障があることが予想されるが,研究課題全体の進捗に大きな障害はないと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は,実証した「イオン流れの高速時間分解計測」実験系を用いてkHzオーダの交流バイアスによるイオン挙動変化を捉える実験を行う.従来の実験系よりもシースにより加速されたイオン速度が保存される空間領域を拡大させるため,これまでのプロセス型プラズマ源から電気推進型プラズマ源に装置改造を行う.イオン加速電極を通過した準安定状態のイオンに対してMHzオーダで強度変調した励起レーザー光を照射し,励起したイオンから発せられる蛍光信号を光電子増倍管で検出する.検出された蛍光信号の変調周波数成分を高速ロックイン計測することにより蛍光信号強度の時間変化を得ることができる.この実験系により,交流バイアスや,異常放電など様々なプラズマ変動に対するイオン流れ挙動を解析する. これらの研究成果をまとめ,関連分野の国際会議での発表や論文誌への投稿を行って広く国内外にアピールする.
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