有機溶媒であるキシレンに硫黄粉末を溶解させ,その中で液中プラズマを生成することにより,硫黄原子を含有したナノ炭素材料を合成した。合成された炭素材料は,直径数十nm程度の球形の一次粒子がランダムにつながったものであり,一次粒子はグラファイト構造を有する結晶子から構成されている。また,炭素材料中に硫黄原子が均一に分布していることが確認された。 合成した硫黄含有炭素材料は,S-S結合やS=O結合,S-O結合を有していることが確認された。炭素材料を1000度でアニーリング処理することによって,S-S結合やS=O結合,S-O結合がC-S結合へと置き換わることが確認され,また,グラファイト構造の結晶性の向上と共に,比表面積の増加が確認された。 合成した炭素材料の触媒性能を,酸素還元反応の触媒として用いて評価した。炭素材料をアニーリング処理することで触媒性能の向上が見られ,主要反応経路である2電子反応において,可逆水素電極電位に対して0.890 Vという低い過電圧において,25.66 mA/cm2という高い電流密度が得られた。また,合成した炭素材料をナトリウムイオン電池の負極材料に用いて,電池性能の評価を行ったところ,アニーリング処理によって電池性能の大幅向上が見られた。充放電の5000サイクル以上にわたって約150 mAh/gと大きな可逆容量を維持し,また,100 A/gという極めて高い比電流において,可逆容量174 mAh/gと他手法で合成された硫黄含有炭素材料よりも優れた性能を達成した。C-S共有結合の増加および結晶性の向上が,このような優れた電気化学的特性に寄与したと結論づけた。
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