研究課題/領域番号 |
19H01892
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
山崎 剛 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (00511437)
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研究分担者 |
佐々木 勝一 東北大学, 理学研究科, 准教授 (60332590)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 素粒子理論 |
研究実績の概要 |
強い力の特徴であるクォーク・グルーオン→核子→原子核という階層構造を統一的に扱い、第一原理計算が可能な格子QCD計算から、軽いハドロンの性質を定量的かつ総合的に理解することを目指した研究を行った。 その一つが素粒子標準模型を超える物理の探索に関係するK中間子セミレプトニック崩壊形状因子の計算である。現在、キャビボ-小林-益川クォーク混合行列要素の一つであるVusには、標準模型からの予言値と実験値にズレが示唆されており、このズレの検証が急がれている。本課題では、一辺が10fmを超える大体積かつ現実的クォーク質量で生成されたゲージ配位(PACS10配位)を用いて、K中間子セミレプトニック崩壊実験によるVusを決定するために必要なK中間子崩壊形状因子の高精度計算を実施した。0.6%誤差でVusを決定した以前の研究よりも更に精度を上げた計算を行い、良好な中間結果を得た。 また、核子形状因子研究についてもPACS10配位を用いた計算を継続した。以前の研究で明らかになった核子荷電半径に含まれる15%程度の系統誤差の原因を明らかにするため、格子間隔の小さなPACS10配位での計算を実行した。その結果、以前よりも小さな格子間隔を用いた計算から、実験値に近い荷電半径を示唆する結果が得られた。今後、この計算の統計精度を上げて、荷電半径に含まれる格子間隔による系統誤差の大きさを調査する。その他にも、標準模型を超えた物理探索に重要となる核子テンソル荷、スカラー荷の計算を実施し、他グループの結果に比肩する精度の結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述のように、K中間子セミプトニック崩壊形状因子計算、核子形状因子及びテンソル・スカラー荷の計算は順調に進んでいる。また、それらの発展的研究である、格子間隔を小さくしたゲージ配位を用いた研究を開始している。この計算には2020年に稼働したスーパーコンピュータ「富岳」を利用しており、研究の大きな進展が期待できるため。
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今後の研究の推進方策 |
今後の主な目標は、上述の研究成果を得た計算よりも格子間隔を小さくしたゲージ配位を用いて、K中間子セミレプトニック崩壊、及び、核子形状因子の計算を行うことである。 これにより系統後誤差の大部分を占めると考えられる有限格子間隔に起因する不定性を格段に小さくできる可能性がある。それ以外にも、軽中間子電磁的形状因子計算やハドロン荷電半径を形状因子を介さずに直接計算する新しい方法の開発研究を行う予定である。 それらの研究成果はできるだけ早く論文としてまとめ、学術雑誌Physical Review Dなどで発表する予定である。
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