研究課題
強い力の特徴の一つにクォーク・グルーオン→核子→原子核という階層構造がある。この階層構造を統一的に扱うことが可能な、強い相互作用の第一原理計算である格子QCD計算から、軽いハドロンの性質を定量的かつ総合的に理解することを目指した研究を行った。研究代表者の所属するPACS Collaborationでは、一辺が10fmを超える大体積かつ現実的クォーク質量で、3種類の格子間隔でゲージ配位(PACS10配位)を生成し、それを用いた精密計算を目的としたPACS10計画を実行中である。本課題ではこのPACS10配位を活用した研究を実施した。その一つが素粒子標準模型を超える物理の探索に関係するK中間子セミレプトニック崩壊形状因子の計算である。現在、キャビボ-小林-益川クォーク混合行列要素の一つであるVusには、標準模型からの予言値と実験値にズレが示唆されており、素粒子標準模型を超える物理の探索の観点から、このズレの検証が急がれている。K中間子セミレプトニック崩壊実験からVusを決定するために必要なK中間子崩壊形状因子の高精度計算を、2番目に細かい格子間隔のPACS10配位を用いて実行し、2020年に得られた研究結果を上回る精度でVusを決定した。この研究成果をとりまとめた論文は学術雑誌に掲載された。また核子形状構造研究については、1番大きな格子間隔のPACS10配位を用いた計算により、標準模型を超える物理探索に関係した、核子スカラー荷およびテンソル荷の精密計算を行い、これまでの他グループの結果と比較し遜色のない結果が得られた。この成果をまとめた論文についても学術雑誌で発表を行った。それ以外にも、形状因子の微分係数で定義される荷電半径を形状因子を介さずに、直接計算する方法の開発研究も行い、中間結果を国際会議で報告した。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
【受賞】第9回成果報告会におけるHPCI利用研究課題優秀成果賞, 山崎 剛(課題代表), 藏増 嘉伸, 石川 健一, 新谷 栄悟, 他5名
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (19件) (うち国際学会 11件、 招待講演 3件)
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