研究課題/領域番号 |
19H01893
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大平 豊 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (40589347)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 初期宇宙 / 磁場 / 宇宙線 / プラズマ / 衝撃波 |
研究実績の概要 |
初期宇宙での宇宙線による磁場生成機構について理論的に調べた。初代星が超新星爆発した後の超新星残骸で、宇宙線が加速される。この初代宇宙線による赤方偏移z~20の宇宙における磁場生成機構を4つ新たに発見した。 初代宇宙線が広がってく系での一般化されたオームの法則を導出した。宇宙線がない系では、存在しない新しい項が加わることを示した。宇宙線電流を打ち消すために生じる電子の帰還電流によって生じる電子の流れが非一様なとき、電磁場が自然に生成されることを発見した。また、第一原理プラズマ粒子シミュレーションによって、発見した新しい磁場生成機構を再現することに成功した。 宇宙線電流を打ち消すために生じる電子の帰還電流によって生じる電子の流れは、電子の密度分布を変えずに圧力分布だけを変えること、それによってビアマンバッテリー機構が働き磁場が生成されることを発見した。また、多流体プラズマシミュレーションによって、発見した新しい磁場生成機構を再現することに成功した。 宇宙線電流を打ち消すために生じる電子の帰還電流によって生じる電子の流れは、陽子とのクーロン相互作用により散逸し、電子プラズマは加熱される。その結果、ビアマンバッテリー機構が働き磁場が生成されることを発見した。 初期に磁場がない部分電離プラズマ中を伝搬する無衝突衝撃波中の磁場生成機構について調べ、電荷交換反応によって、陽子プラズマのみが実質加速されることになり、電子と陽子との間で相対速度が生成され、磁場が作られることを発見した。また、電荷交換反応によって生じる陽子ビームが電子の帰還電流を誘導するため、上記のその他の磁場生成機構も働くことを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
目標とする、部分電離プラズマ中を伝搬する無衝突衝撃波をシミュレーションする計算コード開発は、遅れている。一方、完全電離プラズマ中を伝搬する無衝突衝撃波をシミュレーションする計算コードは、千葉大学の松本洋介特任准教授が開発したものを使うことで、目標を達成した。 また初期宇宙での宇宙線による磁場生成について新しい機構を4つも発見した。そのうち2つは、論文にしたが、残り2つは執筆中である。これらを総合して、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度から、スーパーコンピューター「富岳」を用いて、初期宇宙での超新星爆発によって作られた完全電離プラズマ中を伝搬する無衝突衝撃波のプラズマ粒子シミュレーションを行う。シミュレーションコードは、千葉大学の松本洋介特任准教授が開発したものを使う。これによって、初代超新星残骸の無衝突衝撃波でどのような磁場が生成されるか?そこで宇宙線が加速されるか?を明らかにする。 また、背景磁場がない部分電離プラズマ中を伝搬する無衝突衝撃波をシミュレーションするための計算コード開発を行う。 また、これまでに申請者や他の研究者が提案してきた磁場生成機構を同時に解くことができる計算コードを開発し、実際の初期宇宙では、どの磁場生成機構がどこで重要になるのか明らかにしていく。
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